公益財団法人日本生産性本部からレジャー白書2021が発表されました。2020年のゴルフ人口は、ゴルフコースが520万人で、ゴルフ練習場は530万人と推計されています。前回調査結果よりゴルフコースで60万人、10.3%の減少、練習場は20万人、3.6%減少しています。ゴルフ人口等の数値については後述しますが、白書のゴルフ人口が少なく出ていると感じられている関係者は私を含めて多いのではないかと思います。最新のスポーツ庁の発表するゴルフ参加率から推測されるゴルフ人口は令和2年で634万人ですから、100万人以上の差が出ます。サンプルによるアンケート調査ですから白書に限らず調査結果に誤差は生じます。統計的にどの程度の誤差を許容するかということかもしれません。また、経年変化を見るためには相当数の年数が必要です。その点レジャー白書は40年以上のデータが蓄積されているわけですから、長期のトレンドを見る上で貴重なデータです。

 レジャー白書は、私がゴルフ関係の取材を始めた頃の昭和52年(1977)に、当時は財団法人余暇開発センターから発行され、2000年(平成12年)に同財団が財団法人自由時間デザイン協会に改組(期限付)され、発行は引き継がれましたが、2003年(平成15年)3月31日に同協会は解散。現在の社会生産性本部の余暇創研で発行するという経緯があります。余暇関連の継続した統計データはレジャー白書しか把握していなかったという事情もあり、ゴルフも白書のデータが唯一の利用できる統計データでした。

 ところが、総務省は国民の生活実態を把握するために社会生活基本調査を平成8年から国勢調査と連動する形で5年毎に実施しています。この調査の最大の特徴は、調査サンプル数が多いことです。平成28年度調査はサンプル数が17万9,297人でした。サンプル数が多いということは調査の精度が高いということです。今年10月に令和3年度の調査が実施されます。結果の公表は来年(令和4年)秋になると思われますが、発表が待たれます。ただ5年毎ですから調査のない年は推計するしかありません。

 スポーツ庁が、平成28年からスポーツの実施状況等に関する世論調査を毎年行っています。この調査のサンプル数は2万人です。ところでレジャー白書2021のサンプル数は3,246人です。このサンプル数は、アンケート調査の精度に関係しますから重要な要素です。

1.レジャー白書のゴルフデータまとめ

 レジャー白書2021のゴルフ人口関連のデータを表にまとめました。改めてゴルフ人口は520万人で、練習場人口は530万人です。年間平均活動回数(ラウンド数)は14.9回でした。この人口とラウンド回数を掛けた総ラウンド数(利用者数)は7,748万人となり、一般社団法人日本ゴルフ場経営者協会(NGK)がまとめているゴルフ場利用税からみた利用者数とは800万人ほどの差があります。この差は白書の数字では説明できません。

 図1は、2005年以降のゴルフ人口の推移をグラフにしたものです。傾向はゴルフ人口の減少が続いているということになります。2020年は新型コロナの影響で、特に4~7月の4カ月間はゴルフのラウンドを控えた人も多かったと聞いています。そのコロナ禍で心配されていたことが数カ月ゴルフから離れることでゴルフを再開することへの支障が出ないかということでした。ゴルフ人口は10%も減少したという結果は、自主的なコロナ対策でゴルフを自粛したゴルファーが少なからずいたということになります。英国などでは、ロックダウンでゴルフプレーができなかった反動から解除後にスタートの予約が過去にないペースで増えたとか、新規入会者が過去にないほどの申し込み、というニュースを見ました。

 

 ところで、白書はコロナ下でゴルフ練習場の市場規模が拡大したと報告しています。公益社団法人全日本ゴルフ練習場連盟(JGRA)からも練習場利用者が増えているという報告がされています。2020年後半以降ゴルフ場の利用者数が急速に増えたことを含めて、コロナ禍でゴルフが見直された結果といえます。

 しかしながら、ゴルフ場と練習場の人口の相関をグラフ(図2)にしてみると、短期的には練習場の人口がゴルフコースを上まわって増えた時期がありますが、共に減少傾向に歯止めが掛かっていないことが分かります。

2.ゴルフ市場規模の推移

 ゴルフコースと練習場と用品の推計される市場規模をグラフ(図3)にまとめました。ゴルフコース市場規模は7,190億円(前年比18.5%減)、練習場1,300億円(4.0%増)、用品3,170億円(7.8%減)と、練習場は規模が拡大しましたがゴルフコース、用品とも縮小しています。ただ、2020年の市場規模は新型コロナという特異な要因が大きく影響していますから、統計的には外れ値と考えることができます。社会が落ち着けば状況は改善へと動くと考えられます。しかし、日本の人口が減少する中でゴルフ人口の減少も起きているという状況は変わりません。それでもゴルファーを増やし、利用増を図らなくてはいけないわけですから、コロナ禍でゴルフを中断した人が再開しているかどうかについては業界としてアンケート調査などを実施して動向を把握する必要があります。TポイントカードのCCCマーケティング株式会社が先ごろ調査したゴルファーアンケートでは、コロナ禍はゴルフの良さを知らせる良い機会になり、ゴルフに対する認知が深まると同時に、家族、友人との関係や健康・幸福感といった側面に対して関心が強くなっている傾向が現れています。この傾向は、スポーツ庁の調査でも現れていた傾向です。新型コロナで健康や死に対する意識が強くなったと言われていますが、スポーツを通じて健康増進、人との繋がりや絆に対する関心が高まっていると考えられます。ゴルフ(スポーツ)の普及を後押しするキーワードといえます。もちろん、高齢化社会という社会構造の問題も大きく影響していますから、ゴルファーのニーズや、更に目的が明確なウォンツを拾い上げる活動をゴルフ業界からすべきです。

最近10年間の推計ゴルフ市場規模

 ここで、よくある議論で、経済が回復すればゴルフ需要も増えるという期待感があります。そうあって欲しいと思う気持ちは分かりますが、本当にゴルフ需要は景気に連動しているのでしょうか? ゴルフ市場規模の推移と国民総生産(GDP)の動きをグラフにしたのが図4です。

 連動しているような、していないような、これだけではよく分かりません。各市場の伸び率とGDP伸び率の相関を取ってみました。下段の数値がGDPとの相関関係を表す数値です。目安ですが、0.3未満は相関なし、0.3~0.5が弱い相関がみられる、0.5~0.7はやや強い相関があり、0.7以上が強い相関があるという判断になります。ゴルフコースは相関係数が0.4ですから経済動向と弱い相関がみられ、練習場はほとんど相関がみられません。ところが用品は強い相関がみられます。クラブなどは景気に連動しやすいようですが、用品関係者の見解を聞きたいところです。

3.サンプルサイズと誤差について

 冒頭でサンプルサイズ(数)について触れました。一般的に、調査対象となる母集団(ゴルフ人口など)の規模に対して必要なサンプル数が示されています。ゴルフ人口は数百万人単位ですから、誤差が3%の場合に有効サンプル数としては1,067となります。誤差5%では384で10%の誤差でOKの場合は96サンプルとされます。通常は5%の誤差でアンケートが実施されるケースを多く見ます。これはコストとの関係が強いと思いますが、より精度を高めるために3%で想定した場合は1,067サンプルになります。

 さて、スポーツ庁の調査でゴルフコースの参加率は6.6%でした。数百万人のゴルファーの実像をゴルフ未経験者を含めて探ろうとすると、1、067をこの参加率(0.066)で割ると必要なサンプル数は20,132人となります。スポーツ庁のサンプル数は2万人ですから、ゴルファーのサンプル数が1,067以上あればゴルファー像を見る条件を満たしていることになります。実際に、同調査でのサンプル数は1,324でしたから条件を満たしています。しかし、男性は1,143サンプルですが、女性は181サンプルと少なく、女性については10%の誤差の範囲で数字を見る必要が出てきます。

 ゴルファーだけを対象にするのであれば1000人程度でよいとしても、性別、年齢構成(一般的には人口構成比に合わせる)をどう適切にサンプリングするかは問題です。単純にランダムにアンケートをすればよいというわけにはいきません。

 ここでレジャー白書のサンプル数ですが、誤差という点では10%の誤差を見込んで数字を読む必要があるということになります。10%の誤差とは、ゴルフ人口は468万人から572万人の間にあるだろうと推測されるというわけです。いずれにしても全数調査ではありませんから、どのアンケート調査も誤差を含んでいるという前提で考える必要があります。

 以上は、私の個人的見解を含んでいますが、レジャー白書の数値については、長期的なトレンドを把握できることから、傾向を読み解く情報としては十分役割を果たしています。より正確な数値は、やはりサンプル数の多い調査に寄ることになります。

[喜田任紀]

参考:レジャー白書2021は10月4日発売です。価格は7000円+税

By 喜田 任紀

月刊ゴルフマネジメント前編集長、一般社団法人関東ゴルフ連盟グリーン委員会参与

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