by 米国ゴルフ財団(National Golf Foundation、NGF)
2021年6月
トム・パシュレイは、米国ゴルフ発祥の地として知られるノースカロライナ州のパインハースト・リゾートに籍を置き27年目を迎え、7年間社長を務めている。
パシュレイ氏のリーダーシップのもと、パインハーストは劇的な近代化を実現しました。ギル・ハンズによるNo.4コースの改修、Pinehurst BreweryやThe Deuce Barなどの人気のソーシャルスポットの開設、Thistle Dhuパッティングコースや9ホールのCradle par-3コースなどの魅力的なゴルフ施設の設置などです。
今回、パシュレイ氏に、2020年のコロナウイルスによるパンデミックを経て、2021年にはゴルフツアーが回復すること、ゴルフの将来への期待、そしてゴルフ業界全体とパインハーストの今後について聞きました。
ゴルフ業界全体という観点から、2021年のパインハーストについてどのように見ていますか?
私は、これまでの25年間で経験したことのないようなプレー需要の復活を経験しています。この困難な時期に、パインハーストに来たいと思う人はどれほどの人数に……(2020年には)プレー需要が非常に強くなり、秋の状況は信じられないもので、今年はそれを上回るものになると期待しています。
ゴルファーは、どこに行くかが重要なのではなく、誰と一緒にいるかが重要なのです。ゴルフツアーで友人や家族と一緒にいることが当たり前のことと思えることは二度とありません。私は毎年たくさんのゴルフツアーに行っていましたが、それは継続されるものだというのが前提でした。そう、だから、8人、12人、20人といた仲間と一緒に、パインハーストのような特別な場所に来ることができるようになれば、長い間実現できなかったができるようになり、楽しい気持ちになります。それは、友達と一緒に集まることへの期待感と言ってようでしょう。
パンデミックの中で、ゴルフが急増したことについてはどう思われますか?
いろいろな要因があって、いろいろなことが起こっていると思います。私はスポーツをしている子供たちの父親ですが、子供たちがバレーボールやサッカーをしている間、私はこのような小さな町の体育館に一日中座っていることはできませんでした。オプションでゴルフをしたり、ゴルフ仲間と集まったりする機会もありました。いくつかのことは変わるでしょう。義務ややらなければならないことは増えるでしょうが、私たちが経験する「逃げ出したい」という気持ちは決してなくならないでしょう。
私の14歳の息子はゴルファーではありませんでした。彼はサッカーとバスケットボールと野球の選手で、ゴルフにはあまり興味がありませんでした。しかし、今回のCOVID-19によるパンデミックで、彼のチームスポーツがすべて中止になったとき、ここパインハーストのCradleでプレーするようになりました。ある雨の日、彼は私にゴルフ場がオープンしているかと電話をしてきました。明るい話題はほとんどありませんが、ゴルフをする子供たちが増えたことは、間違いなく良い話題のひとつです。願わくは、私たちがゴルフを始める支援ができればと思います。
「潜在需要」という言葉がありますが、これは大きな出来事が起こることを意味しています。私はそうした状況を期待したことを覚えています。実は、私たちはこの潜在需要という言葉でちょっとした津波(ショック)を経験しました。新しいゴルフ施設トップゴルフは、多くのゴルフ未経験者にゴルフクラブを振り、ボールが空中を飛ぶことを見せてくれました。パインハーストでは、そのような潜在的な需要に対応する準備ができていたことに感謝しています。パッティングコースやショートコースのCradleも用意していました。7,000ヤードのチャンピオンコースを体験するだけでなく、新しい人たちをゲーム(ゴルフ)に迎え入れるための革新的なサポートを用意できたのです。
この1年ほどの間に、ゴルフ界やその周辺で見られたものの中で、今後定着しそうなものはありますか?
以下のことは些細なことですが、長期的には意味のあることになるかもしれません。私たちは、2020年1月に全9コースのプッシュカートを導入しました。皆さんが歩きたいということで、すべてのコースで使用できます。ピンを残しておくというのも流行りましたね。これも残るといいと思います。バンカーではバンカーレーキを使用しないことが1年ほど続きました。バンカーは完璧である必要はありません。願わくは、人々が急いでレーキをバンカーに戻したり、完璧なライにこだわることがないようにしたいですね。
2020年は旅行が制限され、パインハーストのようなゴルフリゾートにとっては大きな打撃となりました。ホテルやレストランの従業員、キャディなどに必要な資金集めのために、従業員救済基金として開催したゴルフオークションについてお聞かせください。
多くの従業員を一時的ですが解雇しなければならなかったときは、それはとても悲惨な状況でした。私と同じくらい、あるいはそれ以上に長くパインハーストで働いてきた人たちです。不安な気持ちでいっぱいでしたが、そうした事態が私やスタッフを奮い立たせ、その人たちを助ける方法を見つけようとしました。私たちは、人々の寛大さと、人々の行動力に感動を覚えました。2020年3月下旬、パンデミックが始まって間もない時期に、このようなプロジェクトが立ち上がったのは、人々がパインハーストや従業員のことをとても大切に思っているからに違いないと感じたことを忘れません。私たちはゴルフボールを25ドルで販売し、誰もが参加できるようにしました。15年前に退職した農学部長は、1895ドルを寄付してくれましたが、これはすべてに通じるものでした。すべて元に戻ってくるようになってからは、『パインハースト・ファミリー』という言葉を使うようになりました。
現代の消費者が求めているものを現代風にアレンジしてアピールする一方で、パインハーストのような施設の歴史を大切にすることのバランスはどうでしょうか?
私は長い間、ここでマーケティングを担当していたので、自分たちのユニークな売り物は何かを考えたとき、それは歴史でした。伝説の足跡をたどることができるということは、私たちの包括的なキャンペーンでした。ある時、「パインハーストはちょっと真面目すぎるのではないか」というコメントを頂いたことを覚えています。それは想像外の反応でした。そもそもここは真面目な場所なんです。これまで多くの素晴らしい瞬間を経験してきたのですから、自分たちのことを真剣に考えるべきではないでしょうか。でも、そのことが危険なのです。伝統的なものやフォーマルなものとのバランスを取りつつ、過去に囚われないこと。私は、歴史という衣装を着てバターの作り方を教えてくれるような、昔ながらの素晴らしい歴史的な観光地を思い浮かべます。それはそれで楽しいのですが、私は自分でそれを体験したいのです。
パインハーストはタイムカプセルではありません。ここに来て、かつてのゲーム(ゴルフ)がいかに素晴らしかったかを振り返る場所ではありません。ここではそれができますが、現在のゲームを祝福しつつ、将来について考えることもできます。これは私たちにとっての課題のひとつです。もう少し限界に挑戦したいと思うこともあります。しかし、私は、「行き過ぎた人」になることは望んでいません。The Cradleのような作品では、音楽活動を始めたときのように、少しだけ頑張りすぎたかもしれません。私たちは、やり過ぎることを恐れて、音楽を演奏することをやめたかもしれません。しかし、私たちは足を踏み出し、試みは賞賛されました。パインハーストNo.2は復元されました。あれは、いわば月面着陸のようなものです。 すばらしいアイデアでした。そして大きなリスクもありました。最初の人がティーアップしたときから、その作業が完了したときまで、人々はパインハーストがその歴史を認め、ドナルド・ロスの美学を守っていることに好意的な反応を示してくれました。過去に忠実でありながら、現代にも通じるものでなければならないという思いを強くしました。
出典:Interview: Pinehurst Resort President Tom Pashley | The Q (thengfq.com)