by David Lorentz

2021年3月

 最近、業界では数百万ドル規模の質問が飛び交っています。特に、2020年はリピーターや新規参入ゴルファーが異常なほど増加した(19年比27%増)ことを踏まえると、どうすればこの新しく参入してきたゴルファーを、より多く持続した需要にできるのだろうか?

 この問題は複雑な要素を含んでおり、すべてのレベルで需要を維持することは、多くの人の行動様式に依存するため、単純な答えはありません。この問題はマクロ的な課題ではありませんが、私たちは個々のレベルでの議論を通じて、その暗号解読に一歩近づくためのいくつかの有効な手がかりを見つけるべきです。

 この問題解決のためには特に、マズローの欲求階層に象徴される二つのポイントに注目してください。一つ目は「尊敬欲求」で、高く評価されること、尊敬されること、注目されること、地位を得ることが中心となります。もう一つは帰属意識です。社会集団に受け入れられていると感じたいという原始的な欲求といえます。マズローの欲求のフレームワークの心理的レベルを形成する自尊心と帰属意識の両方が、実はゴルフの定着率の低さに大きく関係しています。

まず、「尊敬欲求」から見てみましょう

 NGFで、私は常にゴルフの満足度と定着率を説明する裏付データの研究をしてきました。その結果、「ショットの幸福感」が、ゴルフを続ける人とそうでない人を分ける最も強い要因の一つであることを見つけました。ゴルフをやめた人の多くは、やめた理由をプレーにかかる時間や費用のせいにしていますが、彼ら/彼女たちはゴルフをやめる前にナイスショットの興奮を経験したことがない(またはほとんどない)ことを認めています。事実、アクティブで熱心なゴルファーの90%以上と比較して、非アクティブな参加者の3分の1だけが、「1ラウンドの中で少なくとも1回はショットらしいショットを打って、ホールアウトすることができた」と答えています[1]。

 この結果から、ゴルフは「難しくて誰にでもできるものではない」という意見が出てくると思いますが、この結果は簡単ではないこと以上に検討に値する内容を含んでいます。ショットの幸福感が顧客維持の重要な要素であるならば、私たちはそれについて本当に本人任せにしておいていいのでしょうか? コースでの体験やゴルファーとの間を取り持つことなどで、より幸福感のある瞬間を生み出す対策があるのではないでしょうか? どのように対処すれば、4時間のゴルフプレーを終えて、達成感や尊敬の念を持てないでいるお客様に対して、よりよいプレー環境の提供ができるでしょうか?

 ちなみに、「ショットの幸福感」は「ランナーズ・ハイ」と非常に似ており、多くの専門家はゴルフが大好きなゴルファーを生み出す秘訣だと考えています[2]。

次は社会的(所属)欲求です

 社会的欲求(集団への帰属意識)は非常に現実的で、常にシグナルを必要とします。ダニエル・コイルは著書『The Culture Code』(邦題「THE CULTURE CODE 最強チームを作る方法」)の中で、「目に見えないほどの微妙な帰属のシグナルを感知すると、社会的な脳が活性化する」と述べています[3]。

 ここで、「他のゴルファーと一緒にいると落ち着く」と答えた人は、ゴルフを止めた人の内、半分しかいないことについて考えてみましょう。また、最近の調査では、スタート時に、グループに初心者がいることを知らされた場合、コア・ゴルファーの80%が、少なくともある程度の不快感を感じると認めています。そう、これが「仲間の合図」ではないでしょうか。

 ゲームのプレースピードを上げるとか、ラウンド時間を短くするとか、もっと「楽しい」何かを提供するとか、さまざまなことを言うことは簡単ですが、人々の本来持っている心理的欲求が満たされない限り、継続するためのジレンマを解決することはできません。この課題には、目的を持つことと、人にあった解決策が必要です。私たちは、これらのニーズを念頭に置いて、新規およびリピーターのお客様を積極的に識別し、彼ら・彼女たちを惹きつけるオペレーターの話を聞くことを楽しみにしており、数百万ドル規模のゴルファーの定着という問題にどのように取り組んでいるのかを聞きたいと思っています。

[1] 現在プレーしていて、今後もプレーする可能性が「非常に高い」と答えた人(健康で経済的に余裕があることが前提

[2] Tom Holland, an exercise physiologist and author of several endurance training books, says “I have found that if I can take a beginning runner and get her to experience [a runner’s high], then I have a shot at making her a runner. It is no guarantee, however, and she needs to experience it numerous times before she will believe it is a part of the process and not an isolated event. Then, when we go really long and she experiences the true runner’s high, I know I have her. And you only need to experience it once to be a believer.” Holland, Tom. The Marathon Method: the 16-Week Training Program That Prepares You to Finish a Full or Half Marathon at Your Best Time. Fair Winds Press, 2007.

[3] Coyle, Daniel. The Culture Code. Bantam, 2018, p.26

Reprinted with permission of NGF.

出典:https://www.thengfq.com/2021/03/cracking-the-code/

図の和訳

ゴルファーの定着を考える

マズローの欲求階層

自己実現

自分の可能性を最大限に発揮すること

尊厳欲求

尊敬、自尊心、達成感、地位、認識

社会的(所属)欲求

友情、親密な関係、つながりの感覚

安全欲求

身辺警護、安全性、健康、生活の質、雇用

生理的欲求

食べ物、水、暖かさ、シェルター、衣類、休息

(左サイド)

論点:ゴルフをやめた人のうち、「1回のラウンドで、少なくとも1回はショットらしいショットを打った」と答えた人は、わずか1/3しかいない

論点:「他のゴルファーと一緒にいると落ち着く」と答えた人は、ゴルフをやめた人のうち半分しかいない

(右サイド)

自己実現のためのニーズ

心理的欲求

基本的欲求

データソース ナショナル・ゴルフ・ファウンデーション

1.MAslow. A H.(1943). 人間のモチベーションの理論. Psychological Review, 50(4), 370-396

このグラフィックは、オリジナルの形でのみ再出版できます。また、NGFの許可なくデータを再利用することはできません

By 喜田 任紀

月刊ゴルフマネジメント前編集長、一般社団法人関東ゴルフ連盟グリーン委員会参与

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