ゴルフ人口が発表されるたびに、実際より少ないのではないかと、その真偽について、常に「本当かな?」と疑いながら、ゴルフ人口の減少が進んでいることだけは間違いないと記事にしてきました。ゴルフ人口が推計できる調査は、公益財団法人日本生産性本部が発行する「レジャー白書」と総務省統計局が5年ごとにまとめる「社会生活基本調査」とスポーツ庁が平成28年から実施している「スポーツの実施状況等に関する世論調査」があります。
レジャー白書は、インターネット調査で、調査対象が全国15歳~79歳男女で、有効回収数が3,226(人)。社会生活基本調査は、10歳以上を対象にサンプル数は17万9,297人と多く、スポーツの実施状況等に関する世論調査は18歳以上79歳までの2万人を対象にしたインターネット調査です。このように調査方法、対象年齢に差があり、結果として人口に差が出ます。サンプル数が最も多い社会生活基本調査のゴルフ人口が精度が高いことは素人でも分かるわけですが、5年ごとの調査ということから、毎年のデータとしては不便です。また、社会生活基本調査は、ゴルフ人口はゴルフコースとゴルフ練習場を合わせた調査で、他の二つはゴルフコースと練習場を分けて調査しています。この点も比較が難しい原因になっています。この点については、スポーツ庁の調査結果がローデータ(加工前)の形で公表されていますから、ゴルフコースと練習場の両施設を利用する人口とゴルフコースだけ、練習場だけに分解できますから、スポーツ庁の結果と社会生活基本調査の結果と比較できるようになります。関連記事はhttp://jgin.wp.xdomain.jp/スポーツ庁のスポーツ実施状況調査1/で確認いただけます。
誤差を考えましょう
ところで、すべてサンプル調査ですから当然誤差があります。レジャー白書でゴルフ人口が670万人と出て、「少ない」と思われた人は多いと思います。データとしての見方は、経年で見て、増加傾向にあるのか減少傾向になっているのかを判断する材料であることをまず理解する必要があります。そして、調査は全国民を対象とした全数調査ではありませんから誤差について考えておく必要があります。全数調査をすれば国勢調査(平成27年度予算672億円)規模の調査になりますから、必要性という点からもサンプル調査となります。ですから誤差について理解していれば、推計値として670万人という数字が出ても、幅があると理解できるはずです。
レジャー白書で誤差を計算すると、標準誤差が±0.9%になります。2019年のゴルフコース参加率でみると、6.7%を挟んだ5.8%から7.6%の幅の中にあると考えられるということになります。推計コース人口は584~756万人の間となります。670万人では少なすぎると思われた人は、上限の756万人は想像範囲の人口になりましたか?
ついでですから社会生活基本調査の標準誤差は、サンプル数が多いことから0.1%と小さく、推計人口876万9000人で誤差は±約10万人です。スポーツ庁のゴルフ人口は、標準誤差は0.4%ですから、人口数の誤差は±約40万人です。これくらいの幅を考える必要があることと、社会生活基本調査の誤差の少なさが、この調査の重要性はお判りいただけると思います。
といっても、ゴルフ人口は何万人から何万人の間(推定人口±α)では、不便ですから推計値を採用することになります。あくまでも推計値ですから、絶対この人数といった数字ではなくて、あくまでも目安としての人口ということです。
計算式:標準誤差=1.96×√((P×(1-P)/n)[√はP×(1-P)/nの平方根です。nはサンプル数]
三つのゴルフ人口に大きな差はない?
紹介した三つのゴルフ人口を一覧表にしました。
社会生活基本調査のゴルフ人口とスポーツ庁調査のゴルフ人口(喜田推計)を比較すると、推計値での比較では全体(合計)でスポーツ庁の数値が7万4000人少なく、8.1%少なく出ています。ただし、社会生活基本調査が平成28(2016)年調査で、調査時点3年経過しているおり、仮に今調査されたとすると差は縮小して数値としては近くなっているはずです。
先ほど紹介した誤差を考慮(無理やりですが)すると、最も人口が多く出た社会生活基本調査の人口とスポーツ庁のデータの上限で比較すると30万人ほどの差に収まり、率では3.9%と大きな差ではなくなります。また、社会生活基本調査は10歳以上を対象とし、スポーツ庁の調査対象は18~79歳と対象人口にも差があることから、更に差は少なくなると考えられます。
レジャー白書2019のゴルフコース人口は670万人でしたが、スポーツ庁の推計人口は687万3000人(喜田)になります。差は17万人です。近くなっています。
調査の数値に差が小さくなっていることと、誤差を含めてゴルフ人口を見てくると、最近の調査は一定の幅の中に納まってきているといえ、充分、全体像を把握できるといえると思います。そしてスポーツ庁の調査はサンプル数が2万人とちょうど良い規模で、ゴルフだけのサンプル数も1,600程度(1000サンプルあれば分析に耐えられます)を確保できていますから、ローデータが公開されていることから、性別、年齢階層別の分析に使えます。
なぜ、今頃こんな話をと思われるでしょう。一般的に言われているゴルフ人口が、ほぼこの幅(誤差範囲)に収まるとなれば、もう少し多いという議論ではなくて、現在の人口を5年で+10%増やすとか、10年後にはこの規模まで増やそうという議論に集中し、具体的なゴルファーを増やすプログラムを業界で作成して、実行する取り組みに集中することが大事だと思うからです。