2.誘い・誘われてゴルフは始める

 ゴルファーの皆さん、ゴルフを始めたきっかけを覚えてますか? 昔は、麻雀とゴルフをしないと仕事にならないと、先輩がゴルフクラブの購入から練習場でのご教授、そして「そろそろいいだろう」とゴルフコースデビューまでお膳立てをしていただき、当日はキャディさんにからかわれての晴れて新米ゴルファー誕生と相成ったわけだが、無理やりの感はあったが、職場の先輩の手ほどきで、誘い・誘われの関係で、雨後の筍のごとく至る所でゴルファーが日々生まれていた。

 話がそれますが、小津安二郎監督の「秋刀魚の味」という映画で、佐田啓二にマクレガーのパーシモン(中古ですよ)のドライバーを「良いな、あれ欲しいな」言わせ、友人から安く譲ってもらったものの、妻役の岡田茉莉子に「貴方みたいな身分のサラリーマンがゴルフなんて贅沢過ぎるから返してきなさいと」怒られるというシーンがありました。第1次ゴルフブームの頃ですから、ゴルフは若いサラリーマンの憧れとして描かれました。
 確かにブームは新しい需要を生み出します。戦後の高度成長期の中でゴルフは大きく発展し、ゴルファーが増えました。このゴルフブームの背景には、映画の中でも同僚がゴルフ友達で、やはり誘い・誘われるという関係がありました。
 時は流れ、バブル経済も弾け、経済は低成長、人口の減少という社会構造そのものの転換が始まり、ゴルフ業界も待ちの経営からゴルファーの創造時代へと大きく変わりました。ところが、市場を作るという作業を経験したことがなく、どうすればゴルファーが増えるのかと、少し悩んでいるのが今です。しかし、悩んでいては少子高齢化の進行と同時に日本の人口が減少しますから、ゴルフマーケットも持続可能な市場経営を目指さなくてはいけなくなったわけです。さて、どうすれば・・・

 

 上図は過去1年間にゴルフを再開した、新しく始めた人たちのゴルフをしたきっかけや理由です。もっと多かったのは、友人・知人・同僚に誘われたという理由で、家族に誘われた、友人、知人、同僚、家族、医者に薦められたと「誘い・誘われる」という関係でゴルフを再開し、新しく始めていることが分かると思います。ゴルフ業界がやらなくてはいけないのは、この「誘い・誘われる」という関係を成立しやすくする環境整備です。単体のゴルフコースやゴルフ練習場でも取り組めますが、多くの施設が連携し、さらに関係する団体が手を取り合えば、マーケティングの基本ですが、ヒト・モノ・カネの経営資源を集中することで、効率的な市場開拓ができることになります。

 実は、ゴルフ先進国といわれる米国や英国でもゴルフ業界が置かれている状況は似たものがあります。英米では、業界がゴルファーを増やすべく一大プロモーション活動を展開しています。一挙に大きな成果を得られるという展開にはなっていませんが、着実に持続可能なマーケットへと動いています。ここに新型コロナウイルスの発生という新たな事態が登場したことで、新しい生活様式(New Normal)という社会ニーズの変化、経済活動の停滞と情勢は混沌としていますが、こうした事態だからこそ計画的な活動が不可欠になります。ここは関係者が知恵を出し合って、対応策をまとめ上げる必要があります。

 さて、話題を戻します。誘い・誘われてゴルフを始めた人たち、つまり、いまゴルフを楽しんでいるゴルファーはなぜゴルフをしているのでしょうか?

 

 過去1年間にゴルフをした人の、なぜゴルフをしたかという理由は、①健康のため、②楽しみ、気晴らし、③体力増進・維持と健康を理由に挙げる人が上位を占め、友人・仲間との交流、家族とのふれあいとコミュニケーションや人との関係性(絆)への関心が挙げられています。
 ゴルフは、誘い・誘われる関係で始まり、ゴルフを始めると「健康」や人間関係の醸成という「社会性」に魅力を感じるようになります。この関係性は、コロナ後の社会を考えても需要なテーマです。長寿社会の中でゴルフが果たせる役割、社会的距離という新しい環境の中で、家族、友人、同僚など人との繋がりが改めてその重要性を増すはずです。その触媒としてゴルフは再認識されるべきであり、ゴルフをしない9割の人たちにゴルフの良さを認識してもらうチャンスを得たと考えると、ゴルフ振興への取り組みにも新しい視点が持てると思います。

 

By 喜田 任紀

月刊ゴルフマネジメント前編集長、一般社団法人関東ゴルフ連盟グリーン委員会参与

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