― ゴルファーのウオンツが分かるかも ―

 ハンディキャップの話です。

 ゴルフプレーヤーの技量を計る指標がハンディキャップ(HDCP)ということですが、計算方法や活用方法については、日本ゴルフ協会(JGA)のハンディキャップ専用サイト(https://jga-handicap.com/)を参照していただくとして、HDCPがどのような分布をしているのかをUSGAの資料で説明します。

 グラフ1は、2020年の米国でのHDCP取得者241万7905人のプラスHDCPから54.0以上のHDCPの分布を表したものです。分布は男女の差がありますが、男女ともほぼ正規分布をしています。というのか、リアルなスコアを統計処理して正規分布するようにデザインされたのがHDCPですから、この結果を見る限りHDCPのデザイン(設計)は目論見(狙い)通りに成果をあげています。このHDCP分布グラフを見て何か思いつきませんか? そうなんです、偏差値のグラフです。HDCPは偏差値なんです。

USAGのデータから作成

 さて、USGAのデータから米国のゴルファーのHDCP特性を見てみましょう。

 男性の平均HDCPインデックスは14.2で、女性は27.5です。これが先ほどのグラフのピークが男女で違っている理由で、男性のHDCPで最も多いインデックスは13.0~13.9で、全体の5.42%を占めています。次いで多いのが12.0~12.9で5.41%とわずか0.01%の差です。3番目に多いのが14.0~14.9で比率は5.37%です。

 女性のインデックスの分布は、27.0~27.9で最も多く構成比は4.07%です。このインデックスを挟んで28.0~28.9が4.03%、26.0~26.9が4.01%です。

 男性の平均が14.2で最頻値(最も多い)は13.0~13.9でしたから、インデックスの中心は平均より若干ローハンディに傾いていて、女性はちょうど平均値と最頻値が同じ位置でした。そして男性はピークが女性に比べて尖っており、平均値の近くにより多くのHDCP保有者が集まっており、女性は山が低くなだらかな分布になっているということです。これがHDCPの男女の違い、特性です。男性は13.9以下のHDCPインデックスであれば、平均的なゴルファーより腕前は良くて、女性は26.9以下であればお上手ということになるようです。

 ところで、グラフの左サイド、プラスHDCPインデックスの人がいらっしゃいます。男性で1.85%、女性は0.69%です。GOLF.COMの試算では男女とも3400~3500人ほどがスクラッチプレーヤーということのようです。

(USGAのHDCP INDEXのデータはhttps://www.usga.org/content/usga/home-page/handicapping/handicapping-stats.html から入手できます)

プロのHDCPは?

 ところで、プロゴルファーのHDCPはと気になりませんか? PlayingLesson.comのツイッターに2016~2020年のスコアからみたPGA Tour PlayerのUSGAインデックスをまとめています。掲載しているのはGOLF.COMですが、ツイッターに載っていた表がこれです。ベストインデックスではトップがRickie Fowlerで+8.4、Tiger Woodsは3位で+8.3でした。松山英樹は+7.7です。平均インデックスでは、トップはDustin Johnsonで+6.5、Woodsは4位で6.1、松山は8位の6.1です。グリーンジャケットも当然ということのようです。

HDCPの見方?活用方法?

 JGAのHDCP専用サイトによると5月18日時点でのHDCPインデックス保有者は63万7580人です。USGAのようにHDCPインデックスの詳細がまとめられれば、インデックスの分布が分かることになります。同じ基準で算出されるわけですから、ほぼ同じパターンが現れるはずですが、日本人の特性が読み取れる結果が出るかもしれません。気になります。発表を期待します。

 さてさて、ある米国のゴルフグループが、メンバーのHDCPインデックスとUSGAのデータと比較をしています。当のグループのメンバーのHDCPインデックスはUSGAより左寄りだったそうです。当グループのメンバーは少しだけ平均より腕前が良いと書いていたような・・・。実は、コースの難易度(コースインデックス)が、メンバーや利用するゴルファーの技量とマッチしているかどうかを判断する資料としてHDCPインデックスは活用できると思っています。日本のゴルフマーケットは成熟市場です。ゴルファーに選ばれるコースであるために、利用者のこんなコースが良い、自分に合っているといったゴルファーのマインドに響くコースの提供が、顧客のウオンツに応えるマーケティングに必要不可欠な要素になると思います。また、倶楽部が望む(目指す)姿を実現するために、アスリート系かエンジョイ系かといった選択をするための判断材料ともなるはずです。男女の特性差もそうですが、ゴルファーの顔が見えてくれば、提供するサービスにも差が出せるはずです。せっかくのHDCPですから、活用方法も考えてみませんか。

 ここで、日本のHDCP所有者は、ゴルフ人口の約1割です。倶楽部(コース)によってHDCP保有者数に違いはあってもHDCP保有者数は利用者数から見れば少数派です。倶楽部運営に対する考え方にもよりますが、顧客という点ではこの比率は考慮に入れておくべきです。ちなみに米国でのHDCP保有者はゴルファー全体(この場合コースでプレーするゴルファーです)の1割弱です。比率は日米で同じなんです。

By 喜田 任紀

月刊ゴルフマネジメント前編集長、一般社団法人関東ゴルフ連盟グリーン委員会参与

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