特定サービス産業動態調査2021年5月速報より
ゴルフ場利用者数の増加はピークアウト?
特定サービス産業動態調査(特サビ)の5月分のデータが速報されました。その結果をまとめるとともに、NGFがすでに発表している米国ゴルフ場ラウンド数との比較をしました。
特サビの1~5月までのゴルフ場利用者数データを前年と2017-19平均数を別表にまとめ、グラフにしました。グラフの青色で示したのが今年の利用者数の動きです。4月まではコロナ禍で大幅に人数が減少した前年実績を大きく上回るだけでなく、2017~2019年の3年平均をも上回るペースで利用者数が増えていましたが、5月は流石に前年(2020年)の実績は上回っていますが、過去の3年間実績を下回りました。
まず、日本のゴルフ場利用パターンを整理します。一般的に利用者数の最大のピークは5月にあり、2番目のピークは10月です。このピークである5月の利用者数が2017-19の3年平均に及びませんでした。多くの関係者が仮説として増加の理由に挙げているのが、ゴルフが新型コロナウイルス対策として指摘されている三密を回避できる環境を持つことで指示されているからというものだと思います。コロナ効果といってよいと思いますが、息切れした?のでしょうか。2020年はコロナの影響があったものの5月からは上昇カーブを描き、8月に最初のピークを迎え、例年と同じように10月に2番目のピークとなりました。6月の結果を見ないと息切れかどうかは分からないと思われる人もいるでしょうが、季節変動パターンは大きくは変動しません。夏場を迎え利用は弱くなり、涼しい天候の秋に向かうにつれ再び利用は増えるのです。利用者が落ち込むタイミングで、普通はキャンペーンなどを打って落ち込みをなるべき少なくしようとします。夏季料金の設定もそのためです。価格政策はキャンペーンの一策です。ただこれは従来から取り組まれている対策であり、今年に限って今までとは違う新しい特別なキャンペーンを行い、ヒットすれば別ですが、利用者の行動は、普通は天候などの環境要因が優先されますから6月の利用度は普通は落ちます。相手は母なる自然ですから当たるも八卦、当たらぬも八卦ですが、普通は例年通りです。状況を変えるためには特別なキャンペーンが必要になります。6月、特に全国的なキャンペーンはなかったように記憶しています。
東京オリンピックが開催されますが基本は無観客になりました。テレビの視聴率は高くなるでしょうが、リアルな現場での利用者がどうなるのか、これは調査すべきですし、たぶん誰かがやっているでしょう。それ以外のイベントは、ゴルフウィーク(monthでしたっけ?)がありますが、スポーツ長官杯は8月に変更開催と聞いていますから、長期キャンペーンとして取り組まれるのか、バラバラの開催になるのか。いずれにしても選択と集中の重要性がいわれているように、キャンペーンは目だってなんぼです。密かに開催するキャンペーンなんて、何に例えればいいのだろうか(泣) 敢えてお願いするなら、HDCPを持っているゴルファーを依怙贔屓するのではなくて、ゴルフ振興を謳うならゴルフを始めたい人や初心者を依怙贔屓するキャンペーン、イベントを期待します。
そして気象庁の予報では、今年はエルニーニョ現象もラニーニャ現象も発生していないとのことですから、今秋は穏やかな秋になるようです。これはゴルフ場の利用者動向には良い兆候です。そうなるといいですね。
日米比較 同じようで違う動き
さて、米国との比較です。米国は利用者数のピークが7月に来ます。7月に向けて利用者数は増え続けるのが通常のパターンです。ですから、2021年のグラフは上昇しようとしています。NGFが気にしているのは、マーケッターが指摘する平年(ゴルフでは2017-19平均)に近づくか、いまの上昇傾向でプレーニーズがさらに高まるかどうかです。ここが業界関係者のジレンマですね、多分。ゴルファーの消費傾向は日米で近いものがあるわけで、7月のピークがどんな数字になっているか、いまから気になりますね。
好調ゴルフ練習場の利用動向にゴルフ人口増加のヒントを見つけよう
そして、NGFが気にするであろうデータがゴルフ練習場の利用者数です。NGFはオンコース(ゴルフコース)での利用者数が頭打ちになってきていることから、ゴルフ消費者の対象をオフコース(TOP GOLFなどのレジャー要素の強いゴルフ施設や練習場など)の利用者に強い関心を示しています。より大きなマーケットを想定することで、ゴルフ産業のすそ野を広げよう、そのためにはゴルファーの括りをオンコースに限定しないという戦略を採用しているわけです。日本はゴルフコースと練習場の区別はしているのですが、統合したゴルフ産業政策があるのか?と疑いたくなりませんか。NGFは一体化したマーケットを想定して、オフコースからオンコースへというゴルファーの創造プログラムを考えようと言っているように私には見えます。
ゴルフ練習場の利用者数は確実にこれまでと違った動きを見せています。この数字に喜んでヤッタと傍観していると、増えたゴルファーの定着という次の段階への対応を間違えるかもしれません。ゴルフコースでもそうですが、増えた利用者は既存のゴルファーのラウンド数の増加か初心者の増加が利用者増の原因なのかを把握していないと、本当の対策に繋がりません。特に新規参入が想定されるゴルフ練習場のこうしたデータ把握は、今やらなくてはいけないマーケティング作業です。個別施設でも戦略を立てる上で不可欠な作業ですし、業界全体の動向を把握して産業政策を立てる業界団体としては、すべての団体が共有しなくてはいけない情報だと思うのですが、どうなんでしょうか。絶対に、誰が、どのような目的でゴルフを始めているのか、継続しているのかを知りたくはありませんか。スポーツ庁の「スポーツの実施状況等に関する世論調査」で分析されていますが、この結果と現場で収集したデータを比較することで、どのような人がゴルフを始めて、ゴルフを始める理由は本当にそうなのかの確認ができることになります。
今年の1~5月の利用者数の動きは、ゴルフコースでは落ち着きを見せようとしているのですが、ゴルフ練習場では従来と違う動きが認められます。これまでゴルフコースと練習場の利用者動向は似た動きをしてきました。ところが、今回は違った動きを見せています。何かが違うのです。何かが起きているのです。この違いの中身を知らないで見過ごすと後悔するかもしれません。