2022年2月17日

 ニュートンの運動の第一法則は、慣性(すべての物体は、外部から力を加えられない限り、静止している物体は静止状態を続け、運動している物体は等速直線運動を続ける)を扱ったものです。運動している物体は - さあ、私と一緒に言ってください - 何か別の力が作用しない限り、今の状態を維持します。

 今世紀に入り、20年以上にわたって、米国のゴルフ施設でのラウンド数は減少傾向にありました。プレーヤー人口が減少しただけでなく、現役のプレーヤーたちの間でプレー頻度が減少した結果です。2000年から2019年にかけて、1年間に25回以上ラウンドするゴルファーのボリュームは半減したのです。まず、そのことを考えてみてください。

 ゴルフは、インターネット社会以前の世界における他の多くの事柄と同様に、何百万人ものアメリカ人にとって特別な日常でした。土曜と日曜の朝のティータイムを邪魔することができるのは、神の御業だけでした。それがインターネット社会が登場する以前の社会の慣性でした。

 しかし、インターネットがゴルフの状況を変えました。インターネットは、新しい気晴らし、アイデアや機会をもたらし、ゴルフ以外の時間での慣性を瞬く間に打ち壊したのです。実際、ソーシャルメディアが新しもの好きやオタクの活動を超えて普及するにつれて(日本で云われる形態の普及ですね)、米国におけるゴルフ需要(ラウンド数、用具購入、Google検索など)は、確実に衰え始めたことは偶然ではありません。

 そして、今回のパンデミックはその慣性をも破壊しました。一夜にして日常が一変し、突然、ゴルフの背中を押すフォローの風が吹き始めたのです。旅行に行けず、野球観戦もなく、通勤時間も短くなりました。しかし、ゴルフは存在していたのです。それからどうなったかは、みんなはよくご存じですね。2020年のラウンド数は想像を絶するほど多く、20年間の減少を約半年で帳消しにしてしまいした。ゴルフを始めたばかりの人やリピーターがこれまで以上に増えましたが、既存のゴルファーは大幅にプレー回数を増やしました。これらの増加した理由について説明を求めると、ゴルフが唯一のゲームであったという回答が大半を占めました(2020年8月、67%が「余暇を過ごすための代替手段が少なくなった」ことをプレー増加の理由と認めています)。

 続く2021年はどうなるのだろうかと、私たちは皆が想像を巡らせました。需要が維持されるのか、それとも人々が過去の日常に戻ってしまうのかと推測され、需要は後退するのだろうか。どちらかといえば、前者だったと思います。この1年間、私たちは全米のゴルフコースで、かつてないほど多くのラウンド数を数えました。かつてないほどの増加です。考えてみてください。

 この記録よりも、さらに励みになるのは、その背景にあるものです。1年後の2021年10月、ゴルファーにプレー回数の増加について再度尋ねたところ、過半数の回答がゴルフを「より優先するようになった」と回答し、慣性は変化していたのです。プレーニーズは動き出したのです。

 今年(2022年)に何が起こるかを考えるとき、新規のプレーヤーやリピーターの数を維持するだけでなく、熱心なゴルファーがより高いレベルで活動し続けられるようにすることが、明らかな課題となってきます。どちらの場合も、クリエイティブなエンゲージメント戦略が必要です。キーワードは“戦略”です。

 これは受動的な問題ではなくて、“需要は維持できるのか?”から“どのようにしてゴルフの需要を維持するのか?”に移行しなければなりません。

 あなたのコースやビジネスで、どのように惰性を生み出しているのか、ぜひお聞かせください。ぜひ、ご連絡ください。

デービッド・ロレンツ(David Lorentz)

デービッド・ロレンツ(David Lorentz)

By 喜田 任紀

月刊ゴルフマネジメント前編集長、一般社団法人関東ゴルフ連盟グリーン委員会参与

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください