1.特定サービス産業動態調査分析と取るべき方向性
特定サービス産業動態調査で発表されている売上高指数の月別指数をグラフにしました。2009年から11年間の動きは右肩下がりで推移しています。減少傾向はゴルフ場よりゴルフ練習場で大きくなっています。
人口減少社会という社会構造が転換したことで、ゴルフ場、練習場ともにマーケットは縮小均衡へと向かわざるを得ない状況が続いていることがよくわかります。こうした状況の中では間違いなく需給調整が必要になります。具体的にはゴルフ場、練習場の閉鎖、事業転換といった圧力が今以上に強くなります。人口構造の変化からくる産業構造の変化ですから、今までのように、例えば再生法等で事業再生ができるという事態ではありません。対策はゴルフ需要の創造しか対策はありません。
新しくゴルフを始める人の創造、休止ゴルファーのゴルフプレー再開だけでなく、ゴルフプレーのバリエーションを増やす多様なゴルフプレーの提案が必要です。人口が減少する中でゴルフ人口だけを増やすには限界があります。人がレジャーに使える時間にも限りがあります。ゴルファーを増やそうという掛け声だけでなく、短い時間で楽しめるゴルフプレーの提案も必要ですし、ゴルフが健康に良いという提案ではなくて、主客を逆転して、健康や幸福感、コミュニティや絆作りといった期待や夢を実現するための手段としてゴルフを活用しようという、生活者目線、ライフステージに立った視点での提案が必要になると考えます。コトラー教授の提唱するこれから求められるマーケッティング4.0は自己実現です。個人(消費者)、集団が実現したい、そうなりたいという自己実現をサポートする「ゴルフ」であることが求められるはずです。ですから、ゴルフをしたいのではなくて、「自己の欲求の実現をサポートするゴルフ」という発想が事業者やゴルフ関係者に求められることになるはずです。
積極的な産業政策の展開を
さて、産業振興に必要な要件は、ゴルフ業界が産業政策を共有することです。ゴルフ場や練習場が単独で活動するには限界があります。限られたヒト・モノ・カネの産業資源を有効に活用するためには、それぞれの施設や企業の活動(点)をつなぎ線にして、更に市場という面展開にするのは、同じ産業政策の下で活動することが必要です。ゴルフ競技も競技を支える人口(数)が必要で、プレーの場であるゴルフ場が健全に経営されていなくては、内容のある充実した競技も実現できません。ゴルフに関わる全てが、大きく捉えればゴルフ産業です。産業政策を待つためには市場を知るためのマーケティングが不可欠です。
事業規模が違いますから同列に比較はできませんが、USGAは2017年の決算書を見るとマーケティング経費に約7億円を投資しています。この金額はグリーンセクション費用の9億2000万円に次いで5番目に多い支出です。なにかとネックになる資金ですが、関係団体、また賛同するゴルフ場を含めた企業が、カネだけでなくヒト・モノを集約することで実効性のある事業ができるはずです。ここに国が関与できる政策に作り上げれば、産官共同の政策に発展できると思います。
こうした発想で米国はWE ARE GOLFという日本のゴルフサミット会議をもっと産業政策団体として、また政治的な活動を行っています。R&Aも2004年にThe R&Aという新しい会社組織を立ち上げ(この結果、Royal and Ancient Golf Club of Saint Andrewsとは一線を画しています)、ファンドとマーケティング部門を持つ事業部門の活動を行っています。R&Aの政策には、女性憲章やGolf & Health、倶楽部運営に関するGolf Course 2030などがありますが、その政策提案の中にThe Truth About Golfがあります。ゴルフの真実。真実とは、1.経済的価値、2.女性や家族とのアクセスを含めゴルフの持つ多様性、3.環境保護。4.健康への効果、5.メンタルヘルス効果、6.運動、健康、幸福の実現への科学的根拠(エビデンス)を持つ、7.ゴルフはオリンピックスポーツである、8.アマチュアスポーツの振興、9.プレー環境整備とゴルフ業界と政府との協力―の九つです。
この内容は英国に限ったことではありません。共通のワードはゴルフです。この九つの真実は、日本でも社会への普及と浸透に取り組まなければいけないテーマです。
また、スウェーデンゴルフ協会が取り組んだ医学的なエビデンスとして「ゴルファーはゴルフをしない人より5年寿命が長い」という報告(2008年)があります。ヒトとゴルフは世界共通です。同じ取り組みをすべきだと思います。日本市場は減退しようとしていますが、依然、世界第2位のゴルフ市場を維持しています。健康寿命をさらに伸ばし、健康で幸福な人生をサポートするゴルフであることで、ゴルフマーケットは持続可能な市場の成長を実現できるのではないでしょうか。
注:特性サービス産業動態調査の調査対象地域は、北海道、宮城県、東京都、愛知県、大阪府、広島県、香川県、福岡県の特定地域8都道府県です。紹介するグラフでも明白ですが、集計途中で変更が行われており、数値に不連続があります。データから見ると大きな変更は2002年と2006年と考えられます。練習場は北海道が札幌市に。調査は2000年1月から実施されています。
なお、今後10年間のゴルフ場利用者数の予測については、私のWEBページ(http://jgin.wp.xdomain.jp/予測される令和のゴルフ場入場者数/)を参照してください。結構厳しい数字です。