米国ゴルフ財団(NGF)は、ゴルフコース以外の需要の取り込みを将来の米国ゴルフマーケット拡大のキーポイントに置いています。以前、NGFのこれに関するレポートを、 http://jgin.wp.xdomain.jp/コース外施設で増えるゴルファーの定着化/ で紹介しましたが、改めて日本と米国の状況を比較しました。

 NGFの記事で紹介されたゴルフコース(On Course)とゴルフ練習場等(Off Course)のゴルフ参加人口の構成は2020年米国ゴルフ参加人口のグラフで説明されていますが、ゴルフコースと練習場、両方の施設を利用する人口比率はほぼ三等分されています。

 日本の状況は、スポーツ庁の「スポーツの実施状況等に関する世論調査(令和2年)」によると、ゴルフコースだけが26.1%、練習場だけは16.0%で、両方を利用している人口は57.9%でした(日本と米国の比較図参照)。

日本の人口構成は、スポーツ庁「スポーツの実施状況等に関する世論調査(令和2年)」より喜田が算出

 NGFがゴルフコース以外の施設(Off Course)で増えるゴルフ人口に注目していますが、このOff Courseの人口をOn Courseの需要として取り込むことは、結果として日本の市場構成に近づくことになります。もともと練習施設数が少なかった米国です。私がゴルフ業界に職を得た40数年前は米国の練習施設はゴルフコース以外ではほとんどありませんでした。ニューヨーク市だったか東海岸の都市で練習施設ができたという記事を見た記憶がありますが、ニュースになるほど少なかった気がします。確かにリゾート施設には、今でいうアドベンチャーゴルフ施設(日本の温泉地などリゾート施設のパターゴルフ)はありました。日本は、ゴルフ倶楽部メンバーの家族以外は練習場でスキルアップしてからコースデビューするのが一般的な入門コースでした。ですから、当時は東京などのビルの屋上にはサラリーマン(ウーマン)が腕を磨くフェンスで囲まれた籠(屋上の練習施設をそう呼んでいた記憶が)があちこちに見られました。バブル景気で沸いたころまで結構な数の屋上練習場がありました。現在は、フットサルの施設は増えましたがほとんど見かけません。ま、そうした経緯を経てゴルフコースと練習場の人口構成が結果として自然発生的に登場した。ここに日米の違ったマーケット特性があるわけです。どこかの国の首相の弁ではありませんが、(私の責任は)今の状況に対応(すること)してきた結果で、将来のビジョンがあって現在のマーケットがあるわけではないのです。必要なことは、共有できる将来ビジョンを持てるかどうかだと思うのですがどうでしょう。もちろん試行錯誤があるはずですが、議論のプロセスは見えず、結果だけを報告するだけの日本のゴルフ業界(もちろんJGAもその一つです)には、ゴルフ振興におけるマーケティング的思考が薄いように感じられます。KPIは? KGIは?と聞かれたらどう答えますか。

 ゴルフブームが連続し需要が拡大してきたこれまでは自然増の需要を追いかけていればよかったのですが、ピークを過ぎ、成長のベースとなる日本の人口が減少に転じ自然増が見込めない今後は、ゴルフ業界の市場戦略が不可欠です。世界のゴルフマーケットにコミットするUSGAやR&Aはマーケティングに力を入れ、米国のいくつかの州ゴルフ協会、そして英国のイングランド、スコットランド、ウェールズ、アイルランドの四つのゴルフ協会は市場戦略を共有し、オーストラリアやカナダなどを含めた主要なゴルフ先進国は、ゴルフ業界としてのビジョンを作成、発表し、実行プランを展開しています。

 NGFが目指す方向性は現在の日本の人口構成のようになるはずです。状況は日本が先行しているように見えますが、問題はそれが目指したものだったのかどうかです。目標もなく結果の追認だけであれば、内実は大きく違ったものになると思います。

By 喜田 任紀

月刊ゴルフマネジメント前編集長、一般社団法人関東ゴルフ連盟グリーン委員会参与

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください