ゴルフ場利用税からみた利用者数のうち高齢者(非課税利用者)の利用人数が増えていますが、今後の高齢者利用がどう推移するかを考えるために、社会生活基本調査から高齢者ゴルフ人口の変化を追ってみました。

社会生活基本調査からゴルフ人口を年齢層別に分解

 昭和61年からの推移で見ると、70歳以上のゴルフ人口は昭和61年の9万4000人から、9万9000人、20万4000人、30万4000人、42万8000人、58万6000人と増加し、平成28(2016)年には、団塊の世代が70歳を超えたこともあり一気に76万6000人へと増えています。確かにゴルファーの高齢化は非課税利用者数の増加に表れているように停滞するゴルフ場利用者数を下支えしてきています。高齢者のゴルフ人口の算出では70歳代は79歳までとしました。スポーツ庁の「スポーツの実施状況等に関する世論調査」においても調査対象を79歳までとしており、調査対象として恒常的にゴルフを楽しむゴルファーという定義としては79歳までとして良いと思われます。高齢化社会と健康寿命の延伸という点からも、高齢者の継続的な利用環境の整備が求められるところです。

 ところで、気になるのは高齢者ゴルファーは永遠に増え続けないということです。79歳で対象を区切ったように、体力的にもプレー回数の維持はゴルファー本人にとっても課題になります。米国や英国では9ホールのラウンドを推奨してきています。新しいゴルファーを獲得する環境整備としてゴルフ施設産業が普及に力を入れているわけですが、適切な運動量という点からは高齢者にとって9ホールプレーは快適なゴルフ環境といえます。運動量については、厚生労働省から公表されている運動強度の指数:METS(世界共通の数値)を参考にすればゴルフが適度な運動強度であり、運動の習慣化にゴルフを活用できることが理解されると思います。そのためには、ゴルフを核にした運動プログラムをゴルフ業界として開発することで、ゴルファーの健康維持に貢献できることになります。

 ここで、高齢者ゴルファーへの依存度を高くしているゴルフ業界ですが、もう少し高齢者ゴルファーについて考えてみたいと思います。その前に、国立社会保障・人口問題研究所が作成した2020年の人口ピラミッド図がこれです。70歳前後の人口が突出したよく見る釣り鐘型のグラフです。

 ゴルフの人口構成図を次に示しました。調査年ごとの表も示しました。

ゴルフ人口ピラミッド

 日本の人口ピラミッド図とは少し違いますが、昭和61(1986)年の年齢構成は30歳代がピークを示していました。ところが、平成28(2016)年は40~50歳代をピークに60歳以上で二つ目の山を形成して、高齢化が進んでいることがよく分かります。

 世代別に見ますと、60~64歳の年齢層は、昭和61年以降増加してきましたが、平成28年に減少に転じています。これは調査年の年齢層別人口です。後で、コーホート分析をしますが、コーホートは同じ世代が経年でどのように変化しているかを見る分析法です。

 次に本稿のテーマである70歳以上のゴルフ人口ですが、こちらも増加してきています。団塊の世代がこの世代に組み込まれてきますから、今後数年間は増加をするはずです。これは65~69歳のゴルフ人口が増加傾向にあることから期待はできます。ただし、人口ピラミッド図にもあるように団塊の世代を中心に前後2年程度が突出した人口を形成しています。高齢者増加効果は5年から7年程度が見込めますが、その後は間違いなく減少します。

 先に示しましたゴルフ人口構成図の2016年(緑色)は、30歳代、40歳代、50歳代を10年刻みで示しています。60歳以上は5歳刻みですから、若い世代は半分にして見て下さい。少なくとも60歳以上の層を上まわることはないと考えられます。70歳代については、健康でゴルフを持続的に続けられる体力を維持できていないと現状維持も難しくなります。運動の習慣化にゴルフを絡ませる政策が、国民の健康維持・増進と同じようにゴルフ業界にとっても重要なテーマであることがお分かりいただけると思います。

 ここで、高年齢化する結果、ゴルフからリタイアするという事例が指摘されています。健康を害してゴルフを続けられない、残念ながらお亡くなりになられるゴルファーもいらっしゃいます。よく言われる話として、仲良く4人でラウンドされていたゴルフ仲間のお一人が健康を害されて3人でのプレーになってしなったが、継続してラウンドをされていたのですが、もう一人が亡くなられるか病気になられて仲間が2人になると、お二人ともがゴルフを止められるというお話です。倶楽部側では新しいお仲間を紹介するなどして、倶楽部内での仲間づくりをサポートするわけですが、必ずしもうまくいくとも限りません。会員制倶楽部の気働きのしがいがあるところでもあります。

コーホート分析でゴルフ人口の世代変化を把握する

 先に表記しました表に赤い線を書き入れてあります。何かと思われた人もいらっしゃると思います。これがコーホート分析です。昭和61年時点で60~64歳だったゴルファーが5年後に65~69歳になり、更に5年経ちますと70歳代の年齢層へと移ります。60歳前半のゴルファーが10年経つと何人になったかが分かるという分析法です。これを整理して各調査年のゴルファーがどのように変化してきたかを次の表にまとめました。

 昭和61年は36万4000人から20万4000人に16万人、43.9%減少しています。以下、平成2年は39.0%の縮小、8年は38.9%減、13年は33.9%減、18年は18.2%の縮小でした。18年は、ちょうど団塊世代が70歳の年代に参入してきていますから、団塊の世代効果で縮小率が低かったと考えられます。団塊の世代効果は一時的な効果ですから、18年までの5年間の縮小率を平均しますと34.8%の縮小率になります。平均寿命は延びていますが大きな変化は見られなくなっていますから、健康寿命が大きく伸びれば別ですが、3割程度の縮小は自然減と想定しておく必要がありそうです。

 ゴルフ場の利用者数は人口×利用回数ですから、人口減が避けられないのであれば回数を増やす施策が必要となるという結論になります。これはゴルフが良いということは十分わかっている人たちですから、ゴルフ+αが必要になるということです。ここは知恵の出しどころです。

厳しい将来が見える若年・壮年層の実態

 高齢者ゴルファーについて考えてきましたが、若年、壮年層の動きについてもまとめました。グラフにしましたので、実態が一目でお分かりいただけると思います。市場活性化がなぜ必要か、業界としての取り組みが不可欠になっていることも理解されると思います。

 ゴルフ場利用税から見た利用者数のデータからはジュニアの利用人数も把握できています。増えていません。ジュニア育成活動の効果が出ていないのか、方策の検討が必要なのか検証が必要だと思われます。人口データも減少傾向がはっきりと表れています。ただ、他の年代層でも減少傾向が出ていますから、総合的な検証が必要になります。ジュニア対策は将来のゴルフ業界(マーケット)への投資ですから、十分な検討と対策が必要です。

 20歳代も平成3年以降減少の一途をたどっています。全般的には20歳後半で人口が多いという傾向がなくなり、前半世代との差がなくなってきています。ここも分析対象です。

 30歳代以降も同じような傾向が続いています。30歳代と40歳代は全く同じ傾向といってよいようです。50歳代はピークが平成13年で他の世代と比べてピークの出現が遅く、そしてこの世代でも減少傾向を見せています。少子高齢化と人口減少の影響は他のスポーツ、娯楽にも同じように影響をしていますから、縮小するマーケットの中で顧客をシェアする方向も考えないと市場活性化は難しさを増すだけです。異業種、異業態とのシナジー効果の研究を今から始める必要があると思います。

By 喜田 任紀

月刊ゴルフマネジメント前編集長、一般社団法人関東ゴルフ連盟グリーン委員会参与

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