― 社会生活基本調査2001-2021より ―

 ゴルフ人口の変化を、社会生活基本調査のデータからまとめてみました。データ収録期間は2001年から最新の2021年までの5回の調査で20年間分のゴルフ人口の動きです。全体の把握だけでなく、性別、年齢層別の人口を20年間にわたって追うことで、変化するゴルファーの実態が見えてきます。

 まず全体把握からです。

 以下の表は2001年から5年おきに実施された調査の2021年までの5回分、20年間のゴルフ人口の動きです。

 表1にあるようにゴルフ人口は773万8,000人と推計されています。前回調査の2016年比較で116万2,000人少なく、率では13.1%の減少で、2001年との比較では480万3,000人の減少、38.3%減と6割程度の人口規模に縮小しています。本稿では、5歳刻みの年齢階層別に全体と男女別にゴルフ人口について紹介しますが、余暇全体でスポーツ離れがいわれています。何らかのスポーツを行った人口は、2001年には8162万7,000人を数えていました。2021年の推計スポーツ人口は7478万5,000人ですから、20年間で684万2,000人、8.4%減少しています。前回の16年調査との比較では319万2,000人、4.1%の減少です。確かにスポーツ離れが心配される数字ですが、ゴルフ人口の変化は2桁の減少で、他のスポーツ種目との比較が必要かもしれませんが、ゴルフ人口の減少の大きさが気になります。

ゴルフ人口(2021年)

2001年比=38.3%減

2016年比=13.1%減

スポーツ人口(2021年)

=8.4%減

=4.1%減

 ゴルフ人口を考える上で、日本の人口との関係も欠かせません。日本の人口が減少するという社会構造が変化しているわけですが、国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、2015年には1億2,709万人であった日本の総人口は2040年には1億1,092万人へと1,617万人減少し、率では12.7%減です。そして2053年には1億人を割り9,924万人となり、2065年には8,808 万人になるとされています。このあたりの数字はご存知だと思いますが、今後のゴルフマーケットは参加率を基準にするのか、それとも人口数を基準にして市場を捉えるのかで大きく状況が変わってきます。率で考えるのであれば、人口の減少に比してゴルフ人口の減少を受け入れざるを得ず、一定規模の市場規模を想定するのであれば、ゴルフ場にあっては、利用回数=ゴルファーのラウンド回数を増やす対策を打たなければ、持続可能なゴルフマーケットの維持は難しく、縮小均衡のゴルフマーケットを今から想定してゴルフ場を運営し、経営しなくてはいけないという結論になります。そんなことは十分理解していますよ!という声を期待しますが、明日から縮小均衡ですよ、と簡単には移行できません。準備が必要です。それも準備にかかるタイミングは大事で、必要な時間を考えると取り掛かるのは今です。

 この社会生活基本調査は5歳刻みの分類で、5年毎の調査ですから、時間の経過の中での同じ世代の動きを捉えることができます。例えばゴルフ市場の中核を担ってきた団塊の世代の変化を追うこともできます。このコーホート分析といわれる分析については、本稿の最後に紹介したいと思っています。調査時点での年齢階層像とはまた違ったゴルファー像が見えてくると思います。

年齢5歳階層別ゴルフ人口の推移

 ゴルフ人口を5歳刻みの年齢層でグラフにしました。簡単な解説をつけます。

10~14歳

 この年齢層のゴルフ人口は10万2,000人と推計されています。主要な要因は少子化による人口減だと考えられますが、小学校から中学にかけての子供にゴルフに触れる機会をどう作るかがジュニアのゴルフ人口を増やす鍵です。幼少期にゴルフに触れることで、将来のゴルフ需要を担ってくれる世代を創造できるわけです。倶楽部メンバーの子弟だけでなく広く門戸を開いて、子供たちにゴルフへの機会を提供する活動が求められています。米国や英国の取組みが参考になると思います。

15~19歳

 やはり少子化の影響は避けられないようですが、2021年は参加率も人口も増えて13万9,000人と推計されています。減少傾向から一転、増えているわけで、増加した原因を見つけることで、10代のゴルフ人口増加の対策が見つかるはずです。これは、ゴルフ団体などが組織的に取り組むことで成果が見込めるはずです。

20~24歳

 最近の10年間でゴルフ人口が増えています。ゴルフ人口は49万8,000人で、参加率は8.0%と結構高いというのが特徴です。最近若者が増えているという現象を裏付ける数字かもしれません。そして連続して増えているわけで、なぜ増えているかを詳細に調べる必要を感じます。漠然とゴルフ振興の成果と評価をするのではなく、対策との因果関係を調べるべきではないでしょうか。必ず答えがあるはずです。

25~29歳

 2021年は48万6,000人でした。この年齢層では参加率以上に人口の減少が気になります。ゴルフ場のプレーフィ―は安くはなったといえ、やはりゴルフは費用との関係が強いスポーツです。若い世代をサポートする何らかの対策が必要なのかもしれません。個別ゴルフ場などの施設だけが取り組む対策では効果は少ないかもしれません。

30~34歳

 30代前半のゴルフ人口は48万8,000人でした。この年齢層は2006年調査以降年々減少しています。20代以上に人口の減少がはっきりと表れており、費用の問題か、他の理由が存在するのか調査研究が必要です。

35~39歳

 30代後半の年齢層でも減少傾向がはっきり現れています。人口は30代前半を若干下回る48万4,000人でした。原因追及の必要を強く感じますが、これはゴルフ団体が取り組むテーマだと思います。

40~44歳

 40代前半でもゴルフ人口は減少しています。この年齢層の人口は58万8,000人です。40歳代よりは人口は多いのですが、減少傾向が続いており、気になりますね。

45~49歳

 40代後半世代のゴルフ人口は73万5,000人と30代よりは多いのですが、やはりこの世代でも減少傾向が続いています。コーホート分析で解説しますが、年齢が増せばゴルファーは増えるは、今では慰めにもならない迷信のようなものです。

50~54歳

 この年齢層のゴルフ人口は79万3,000人です。2001年と比較すると半減していますが、起算ベースの人口規模の問題もあり、単純には比較できません。生年で追うコーホート分析などから、世代の動きとして対応する必要があります。

55~59歳

 50代前半よりゴルフ人口は少なく70万9,000人です。この年齢層(調査時点です)は2006年に増えましたが、その後は減少を続けています。

60~64歳

 60代前半の人口は66万8,000人。50代より人口は少ないのです。団塊の世代を含む70代を上まわっていますが、この世代でもゴルフ人口の減少傾向が続いています。

65~69歳

 60代後半の年齢層は前回調査の2016年までは増加傾向にあったのですが、今回調査では減少して67万1,000人です。今後、減少すると予測されますが、ゴルフ場利用税を免除されるだけでプレー回数が増えると考えていて良いとは思えないのですが、どうでしょう。

70~74歳

 70代前半の年齢層には団塊の世代が含まれることから人口は70万7,000人と結構多いのです。ゴルフ消費でも団塊の世代が消費をリードしてきたわけですが、ゴルフ場の利用者数に占める非課税利用者数の動きを見る限り、ラウンド回数を増やしている世代であり、今後の消費にも期待感を持っていますが、同時に仕事からリタイアした年金生活世代でもあり、費用を含め高齢者のプレー環境の整備の必要性を考える関係者も多いと思います。健康寿命との関係を考えても、高齢世代での運動の習慣化を実現するためにも、若い世代から運動(ゴルフ)と健康に関する知識普及と習慣化に対する業界活動が望まれるところです。

75~79歳

 戦中、戦後生まれのこの世代は、起算人口が少ないこともあり、ゴルフ人口も39万7,000人と70歳前半の世代の半数ほどになる。また、75歳はスポーツ対象人口の一つの区切りとして捉えられ、スポーツ庁の世論調査でも対象年齢の上限と設定されています。しかし、ゴルフの運動強度やコミュニケーションをとれるスポーツというゴルフの特性もあり、75歳を過ぎてもこれだけのゴルフ人口を数えている。しかし高齢化に伴う体力の問題もあり、家族、友人と時間を楽しむゴルフという位置づけを、プレー環境の整備を含め、定着させることでさらに健康を維持するスポーツとして息の長い需要(ロングテール)を創造でき、健康を維持することでひっ迫する医療・福祉費用の対策にもつながるはずです。

80~84歳

 80歳前半のゴルフ人口は20万2,000人です。さすがに80歳を過ぎればゴルフを継続して続けられる人口は減ります。ゴルフを楽しんでいるから健康を維持できているのか、健康だからゴルフを続けられるのか、鶏と卵の関係のようですが、運動(ゴルフ)の習慣化が健康維持につながることはよく知られているところであり、医学的なエビデンスも散見されるようになり、WHOも運動の継続を呼びかけています。R&Aもゴルフと身体・精神衛生との関係(Golf & Health)に注目しています。日本でも、積極的な啓蒙活動が求められます。

85歳以上

 85歳を過ぎてゴルフを楽しんでいる人は7万2,000人もいます。ゴルフの効用と言っても良い結果だと声を大にして、世間に訴えたいものです。この年齢層の健康診断結果を見たいものです。

By 喜田 任紀

月刊ゴルフマネジメント前編集長、一般社団法人関東ゴルフ連盟グリーン委員会参与

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