特定サービス産業動態調査が実施されて20年が経った。特性サービス産業動態調査の調査対象地域は、北海道、宮城県、東京都、愛知県、大阪府、広島県、香川県、福岡県の8都道府県です。調査対象地域が政令指定都市を含む地域が多く、実態的にはココに紹介した数値より少なくなります。この点を考慮して分析をお読みください。また、集計途中で変更が行われており、数値に不連続があります。データから見ると大きな変更は2002年と2006年と考えられます。調査は2000年1月から実施されています。
 全体の動きは「ゴルフ場」①で紹介しました。本稿では18ホール平均でゴルフ場経営実態を見ていきたいと思います。

売上高4億5700万円、20年で35%の減収。利用者数は7.8%減
 売上高は、2019年は4億5700万円で、20年前との比較では2億5200万円の減収、率では35.6%少なくなっています。10年前と比較すると4000万円、0.9%の減収です。減収傾向は続いていますが、やや落ち着きを見せているようです。しかし今後を考えると、更に売上げは落ち込むと予想されます。
 売上減少の主因は利用人口の減少ですが、日本ゴルフ場経営者協会から発表されるゴルフ場利用税からみた利用者数の動きにあるように、高齢者の利用が堅調に推移していることから比較的安定しています。しかし、減少傾向が止まっているわけではありません。団塊の世代が後期高齢者層に突入する2025年前後で、人口構造の変化による影響がはっきりと現れるはずです。高齢者に継続してゴルフを楽しめる環境整備が当面の課題です。この対策は、新規ゴルファー創生と共通するプラットフォームの整備につながるはずです。
 この利用者数の推移ですが、2000年の5万284人から3940人の減少、率で7.8%減となっています。利用者数の減少を大きく上回る売上げの減少で分かるように、後述しますが客単価の低下という現象を生んでいます。

 売上げの内訳をみると、2019年はプレー料金収入が3億600万円で全収入の66.9%です。食堂売上げ(直営だけ)は7500万円で構成比は16.5%です。キャディフィ収入は7600万円で全収入の16.6%を占めていました。2000年との比較ではプレー収入が1億4100万円、31.6%減、当時の売上高構成比は63.0%で、現在の方がプレー収入の比率が高くなっています。それだけ他の収入が減少しているわけです。食堂売上げは1億900万円でした。金額では3400万円、30.9%の減収で、構成比は15.4%で1.1ポイント低かった。キャディフィ収入は1億5300万円でした。現在より7700万円多く、ちょうど半減しています。これはセルフプレーが増加したためです。構成比は21.6%で、現在は5ポイント低くなっています。

客単価3割減、効率化への対応が今後も求められる
 客単価が低くなっているとしましたが、2019年の客単価は9900円です。2000年は1万4100円でしたから4200円、30.1%安くなっています。10年前と比較すると1000円、1.2%の低下です。低価格化は一息入れているようですが、低価格化が止まったわけではありません。20年間の四半期データも掲載しました。20年間平均額は1万900円で、平均割れが続いているわけです。現状は1万円のラインをシーズンによって前後している状態が続いています。これ以上の価格を引き下げ圧力が今後加わると考えられますが、価格政策だけでは今後のゴルフ場経営は難しさを増すだけです。ゴルファーの顧客分析をしっかりと行い、ターゲットとするゴルファー層を明確にして、対象とする顧客のニーズとのマッチングを正しく行うことで無用な価格競争を避けることが重要になります。
 といってもITやAIの利用が進むでしょうし、低価格化という圧力は今後も続くでしょうから合理化も継続した経営課題となります。提供するサービスの見直しも求められるでしょう。ここでポイントになるのが従業員数であり、固定費の削減から好むと好まざるにかかわらず正社員、非正規社員という課題から逃げられない状況が続くはずです。効率化からは固定費を下げるという対策は避けられません。
 現状での従業員1人当たり売上高の推移も示しました。従業員1人当たり売上高は減少を続けています。この状況が継続するとすればさらに悪化することは避けられません。高サービス高負担と省サービス低料金の二分化は市場ニーズとして一層強まるはずです。

 従業員数ですが、キャディを除いた人数は、2010年頃に40人を割りましたが、現在は増える傾向にあります。2000年との比較では49人から45人へと4人減、7.6%少なくなっていますが、最も少なかった39人からすると5人増えています。しかし内訳をみると、2000年は正社員が33人でしたが2019年は22人と、11人減少しています。逆にアルバイト・パートの非正規社員数は16人から23人と7人増え、現在は非正規社員が半数以上となっています。従業員の確保難という課題もありますが、固定費の低減という流れからは非正規社員数の増加は避けられないと考えられ、従業員の質や提供サービスの選別とクオリティの維持が今後さらに注目されることになるはずです。
 キャディについては、キャディ確保難が言われていますが、ゴルフ場の選別が進む中で、キャディ人数の減少が続いており、2000年の36人から21人へと15人も少なくなっています。一様に減少しているのではないことから、完全セルフのコースが相当増えた結果と考えられます。キャディサービスは必然的に高サービス高負担のゴルフ場経営形態となることから、避けられない状況でもあるといえます。

By 喜田 任紀

月刊ゴルフマネジメント前編集長、一般社団法人関東ゴルフ連盟グリーン委員会参与

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