NGF(米国ゴルフ財団)のメールを10月10日に紹介しました(この記事はNGFのホームページでも掲載されています)。チーフ・マーケティング・オフィサーのデイビッド・ローレンツさんの記事で、グリーンフィについて記述していました。さすがという内容なので、今回は、彼の原稿をもとに統計的に料金状況を統計的に見る視点について紹介したいと思います。

 日本でも、さまざまに全体像を表すのに平均値は取ってきましたが、原稿にある中央値(メディアン、Median)と最頻値(モード、Mode)について紹介し、今後の料金政策に反映していただければと思います。よく使われる平均値も統計で使用する数値ですが、正規分布している場合はこの平均値が中央値であり最頻値であることから平均値で全体を表せます。平均というと、正規分布のイメージを待ってしまいますが、必ずしも正規分布しているわけではありませんから、これらの数値は同一とは限りません。

■総務省統計局「社会人のためのデータサイエンス演習」オフィシャルスタディノートより。左のグラフが正規分布のグラフです。ほとんどは中央か右のグラフのようにどちらかに偏っています
出典:NGF

 NGFのローレンツさんの記事では、2020年10月時点の9ホールと18ホールの料金比較です。記事の狙いは、「高い」と認識されがちなゴルフ料金が、実は「高くない」ですよという実証記事です。調査対象はリゾートを含むパブリックコースで、ゴルフプレーにとって最適なシーズンでもあるこの時期の料金は、カートフィを含んだグリーンフィは、記事では18ホールの場合で「中央値」は48ドルで、ピークシーズンを避けると(マーケティング用語としてショルダーシーズン:人のシルエットを想像してください。頭をピークに、挟んだ肩の位置に該当)中央値は30ドルに下がります、と言っています。プレー時間を6時間とすると時給換算で8ドルになります。これは高いと思われますか、という記事です。

 さて、なぜ料金の説明を中央値で説明をしたのでしょう。グラフグリーンフィ分布「Distribution of U.S. Peak Greens Fees」には平均の金額も表記されています。18ホールの場合で61ドルです。一般的に使われる平均の料金と中央値では12ドルの差があります。料金が安い米国で12ドルの差は大きいです。

 では中央値とは? グラフを右に倒して、X軸を、0ドルを左に485ドルにして横置きで見ていただければ、9ホールも、18ホールのグリーンフィも廉価な料金方向にシフトしたグラフになります。日本でもたぶん同じようなパターンのゴルフになると思いますが、安い方と高い方からそれぞれ中央に向かって料金を追っていくと、ちょうど半分(真ん中)になる位置にある数値(料金)が中央値です。平均値は料金の総額を集計コース数で割った数値です。これが平均値と中央値の違いです。最初に示したグラフのパターンで、二つの数値が違ってきます。どちらの金額が実態をより正しく現しているかですが、もう一つの最頻値を見てみましょう。最頻値は文字通り最も集計数が多かった金額で表されます。18ホールの場合はグラフからは46ドルとみられます。中央値が49ドルですから最頻値を考慮すると中央値が全体を現わしていると考えてよいと言えます。9ホールで見ると、平均値は33ドルですが中央値は26ドルで、最頻値は20ドルあたりのようですから、9ホールの平均的な料金は26ドルと言えるようです。このように私たちが日常的に良く使う平均値でゴルフのような価格を考える上では、他の数値と比較して検討する必要があります。たぶん間違った情報発信になる可能性があります。

 ところで、ゴルフのハンディキャップの分布はグリーンフィの分布グラフと逆のパターンを描きます。シングルハンディの人数は少なく、ハイハンディのゴルファーが(圧倒的に)多いのです。HDCP=スコアですから、普通にゴルフを楽しんでいる人の腕前は、平均スコアより少しだけ(?)多いスコアでゴルフを楽しんでいるはずです。一度、しっかりとスコアを集計すると面白いグラフが描けると思います。ひょっとしたらアベレージゴルファーの真の姿が分かるかもしれません。

重要なことは、マーケット全体を俯瞰する視点を欠かさないこと

 ところで、NGFの記事が素晴らしいのは、マーケット全体を俯瞰した視点を常に持っていることです。今回の料金の説明もそうですが、10月10日に紹介したこの記事では、最後にとしてこう書かれていました。

「私たちは自分自身よりも顧客(潜在顧客層)に焦点を当てることで、より良いゴルフのストーリーを伝えることができます。ゴルフのブランディングは本質的には私たち業界の自己中心的な事業展開ですが、顧客(ゴルファー)は、私たち産業のことよりも自分自身のゴルフを大切にしています。だからこそ、顧客のことを考えてみましょう。昨年、私たちはデンバーで、様々な消費者をターゲットに戦略的に作成された設問を行い、興味ある成人ゴルファーの活性化を目的としたマーケティングプログラムを試験的に実施しました。広告を市場に出す前に、私たちはデンバーの人々とその他のアメリカ人を対象に、その効果をテストしました。その結果の一部を紹介すると、ドレスコードについての設問では、「ゴルファーと一見して分かる服装をしないゴルファーに増えてほしい」という設問が、ゴルフに関連性があり、親しみやすく、楽しいと思わせる上で最も効果的であることがわかりました。設問への回答から見えてきたメッセージは、広大なフェアウェイや挑戦的なグリーン、時代を超越した伝統ではなく、彼らのユニークなスタイルセンスを必要としているゴルファーに向けたものでした」。

 また結びの文章はこうでした。

「私たちが得ている良いニュースは、ゴルフに対する意識が改善されてきていることです。7年前には、ゴルフについて中立的または肯定的な意見を持っていたゴルフをしない人は43%でしたが、今年に入ってから(パンデミックが流行する前)、その割合は55%に増加しました。これは重要な進歩ですが、まだ前進する余地があります。ゴルフは今、多くの人々の注目を集めています。それに伴い、ゴルフに対する新しい印象、より良い印象を与えることができる機会が増えています。私たちは言葉やストーリーテリングでこれを実現する力を持っていますが、実は、本当の説得力を発揮するチャンスはコース上で起こります」。

 こういうメッセージを発信できる業界人がたくさん出て来ることを期待したい!です。

By 喜田 任紀

月刊ゴルフマネジメント前編集長、一般社団法人関東ゴルフ連盟グリーン委員会参与

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