ブラッドリー・S・クライン(Bradley S. Klein, Ph.D.)
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GOLF COURSE INDUSTRY誌2021年6月2日付

 最近、スーパーインテンデントとの会話で、まず出てくる話題は雇用の話になってしまうことに驚かされます。この話題は、自分たちの力ではどうにもならない要因があるため、彼らにとっては歓迎されざる問題でもあります。

 どんな仕事でも、技術スキルを身につけたり、新しい機器や化学物質を習得し、人間力を高めたり、あるいは単にリラックスした状態を持ったりと、自分がある程度対処できる場合は快適です。現在の労働力不足の問題点は、その原因と解決策のほとんどが、スーパーインテンデントの手には負えない大きな社会的課題の一部です。しかし、問題に対処するためには、原因と結果を明らかにする必要があります。私の知る限り、ゴルフ界の労働力不足には四つの大きな文化的要因があると考えています。

1.キャディ業務の消滅

 キャディの仕事は、かつてはゴルフを楽しむことができる仕事であるとともに、ジュニアをゴルフに誘う最大の機能を果たしていました。その技術は、ゴルフの知識を身につけるだけでなく、子供たちが教育面や社会生活に役立つスキルを習得する貴重なものでした。しかし、ゴルフカートの普及は、煩わしい青少年労働法と同様に、そうした機能のすべて破壊してしまったのです。

 また、キャディ奨学金制度が充実しているにもかかわらず、就労者数は激減しています。その結果、次世代のゴルファーを育てる重要性だけでなく、ゴルフを仕事にしたいと思っている若い世代に対して関心を喚起することができないというジレンマに陥ってしまったのです。

2.ティーンエイジャーの仕事が減っている

 かつてアメリカの中流階級の子供たちの間では、新聞配達、雪かき、芝刈り、デパートのアルバイト、大学のカフェテリアで食器などを洗うなどの仕事が当たり前のように行われていました。ところが親が子供に実際に労働をさせることを敬遠すぎたこと、規制が厳しくなったこと、若者の娯楽としてビデオゲームやコンピューターが普及したこと、造園会社がプロ化を進めたことでこれらの仕事の多くが消滅し、さらに低賃金の大人の雇用を好む大型小売店の出現など、さまざまな理由で10代の労働環境は停滞しました。

 30~40年前に比べて、20代は仕事経験が少なくなってきていることは間違いありません。つまり、ゴルフ場のような過酷で低賃金の仕事を我慢してやる気がないということです。

3.最低賃金が低すぎる

 多くの州では最低賃金が引き上げられて、ほとんどのゴルフ場では最低賃金を上回る初任給が設定されています。しかし、労働者にとって重要なのは、賃金が低すぎて適切な賃金が得られないと判断されると、そのことが阻害要因となり、より高い賃金、より肉体の負担の少ない労働、より適切な時間、週末の休日を提供する産業に仕事先を求めることが合理的な経済判断となります。

4.移民法改正の遅れ

 農業、レストラン、接客業など、肉体労働の多い業界では、アメリカ人が労働を敬遠し、労働力の空白が生じていることは周知の事実であり、それを埋めるためには、過酷な低賃金条件を我慢する意思のある(あるいは必死になっている)人々が必要となります。歴史的に見ても、それには海外からの労働力に依存することになり、彼らは信じられないほど勤勉で、法律を守り、税金を納め、家族のために犠牲になることを厭わないことが証明されています。しかし、政治的な事情から移民法の改正は難しく、多くの産業が深刻な労働力不足に直面しています。これは、外国人の受け入れ人数や職種が制限されているためです。

 このような状況下で、スーパーインテンデントは有能な労働力を確保しようとしているのでしょうか? 幸いなことに、いくつかの有効な手段がありますので紹介します。まず、1時間あたりの給料を1ドルか2ドル高くすることから始めましょう。女性を応募対象者に加えることで、意欲と能力のある人を見つけられる可能性が飛躍的に高まります。また、肌の色や民族、言語が異なる人々にとって魅力的な職場環境を整えることに取り組んでいる職場であることをアピールすることは非常に有効です。また、交通機関の利用券や健康保険などの付帯サービスの充実もお勧めします。また、芝草管理に関するトレーニングやワークショップ、集中的な短期コースの教育プログラムを通じて、キャリアアップの可能性を提供することも有効です。

 スーパーインテンデントは大きな社会問題を解決することはできませんが、ケースバイケースでそれらの結果に対処することはできます。ゴルフゲームの人気が高まっているからこそ、専門的な管理知識の重要性も高まっているのです。

 ブラッドリー・S・クライン博士(政治学)は、元PGAツアーのキャディであり、ベテランのゴルフジャーナリスト、本の著者(「Discovering Donald Ross」など)、ゴルフコースのコンサルタントとして活躍しています。ツイッター(@BradleySKlein)をフォローしてください。

出典:Labor woes (golfcourseindustry.com)

By 喜田 任紀

月刊ゴルフマネジメント前編集長、一般社団法人関東ゴルフ連盟グリーン委員会参与

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