フォア・ザ・ゴルファー
2021年07月02日
USGA中部地区農学者、ザック・ニコルーディス(Zach Nicoludis)
ゴルフコースのプレーコンディションに対する期待は、間違いなく今まで以上に高まっています。ゴルファーが完璧さを追求するあまり、ゴルフコース全体に渡って、たとえラフであっても、どこにボールがあっても安定したライコンディションが求められるようになっています。
ボールがラフに落ちた場合、それは意図した結果ではない可能性が高いのでしょうが、ナイスショットができなかったとき、予測可能で安定したボールの状態を期待していいのでしょうか? ラフには雑草の生えていない健康な草があり、ゴルファーはボールの位置を確認して前進することができるはずだということに、ほとんどのゴルファーは同意するでしょう。しかし、1番ホールでミスショットをした後のラフでのライと、ドッグレッグでコーナーを切ろうとして計画した通りにいかなかった後のライが、必ずしも同じである必要はありません。
ラフが安定したライを提供すべきかどうかという哲学的な議論を超えて、これらの条件を提供するためにはメンテナンスコストの増加という問題があります。ターフコンディションの一貫性を高めるためには、芝の刈り込みや植物保護剤の散布など、多額の投資が必要となります。ほとんどすべてのゴルフコースは、何らかの形でリソースの制約を受けていることを忘れてはなりません。一般的にゴルフコースの中で最も広い面積を占めるラフのメンテナンスにリソースを割くには、予算を増やすか、他のエリアを犠牲にする必要があります。
プレイアビリティとコストの問題に加えて、ラフをより安定させたい場合には、実現性の問題もあります。多くのコースではラフにスプリンクラーが設置されていないため、乾燥した時期には芝が乾いてしまうため、どうしてもバラつきが出てしまいます。また、ラフにスプリンクラーを設置しているコースでも、ラフを均一にするために、フェアウェイやグリーンエリアに水をやりすぎないように注意する必要があります。すべてのコースがラフに選択的に散水できるわけではありませんので、灌漑計画では刈り込みの多い表面を優先する必要があります。
ラフエリアは、非常に厳しい生育環境にあります。ラフの中には木や根があり、日陰になっている場所もあります。表面の排水は、ティー、フェアウェイ、グリーンからラフに流れるようになっており、これがウェットスポットの原因となります。ラフの生育環境は多様で厳しく、またコースはラフでの出費を抑えようとするため、様々な条件下で異なる性能を発揮する草が混在していることが多いのです。その結果、ある程度の矛盾が生じることになります。ラフの芝の芽数をより安定させるために、ゆっくりと移行するか、既存の芝を取り除いて最初からやり直すかの選択は行可能です。しかし、このような改善プロジェクトにはコストがかかりますし、その過程でプレー環境や美観に短期的な影響を与えることもあります。そのコストは、メリットに見合うものなのでしょうか?
ラフエリアに関しては一貫性を求めるのは難しいことです。最終的には、利用可能なリソースに基づいて期待する必要があります。ラフでのミスショットしたボールを常に見つけて前進させることができるのは当然のことです。ボールが完璧に芝に埋まっているか、あるいは青々とした芝の上からボールを打てるかは、それはゴルフの神様が決めることです。
出典:Why the Rough Isn’t Perfect (usga.org)