レジャー白書2022が10月31日に発売されました。価格は7,700円(税込み)です。

 ゴルフ人口について何回か書いてきました。今、ゴルフ人口に関する調査は今回のレジャー白書と社会生活基本調査とスポーツ庁のスポーツの実施状況等に関する世論調査の三つの調査があります。レジャー白書とスポーツ庁の調査は毎年、社会生活基本調査は5年毎の調査です。また調査サンプル数の違いについては、ゴルフ人口に絞って統計DATAのまとめにまとめてありますので、確認をされたい方はこちらをご覧ください。

 ところでレジャー白書は昭和50年代から発行されておりゴルフマーケットの推移を見るにはこの白書に頼ることになります。課題はサンプル数です。レジャー白書は3,211サンプルで、例えばスポーツ庁のサンプル数が2万サンプルあり、精度に関しては白書以外の調査に譲らざるを得ないと思います。ただし、傾向を見る上では十分な調査で、長期トレンドを見る上ではやはりレジャー白書に依存することになります。また市場規模などの推計は白書以外ではまとめられていませんから、今後もマーケットデータとして重宝することになるでしょう。

ゴルフマーケットのトレンドから何を学ぶのか

 さて、今回はゴルフ人口やゴルフ産業の市場規模を経年で追い、マーケットの動き(トレンド)をまとめました。

 ゴルフ人口は、白書ではゴルフコースと練習場で分けて調査されていますから、社会生活基本調査のように二つに分解して考える必要はありません。まず2021年にゴルフコースで1年間に1回以上プレーした人は560万人で、前年より40万人増え、7.7%の伸びを見せました。ゴルフ練習場の人口は570万人で、コースと同じ40万人増え、7.5%の伸びでした。なぜ人口が増えたか? 残念ながら白書の調査項目には増やした、減らした理由などの項目がなく、想像するしかありません。一般的にいわれている三密を防げるなどの理由が考えられますが、本当の因果関係は白書からは分かりません。スポーツ庁の調査などと合わせて考える必要があるということになります。この「なぜ増えた」を知りたいのは業界(関係者)であり、本当に知りたいなら、ゴルフ業界で調べなさいということです。業界と書いていますが、競技団体もゴルフ振興を考えるなら”十分”業界関係者です。となるとコストパフォーマンスを考えても業界団体がまとまって調査するのが当たり前となるはずです。人口が増えた、減ったと一喜一憂しているだけでなく、「なぜ」を知ることで、少子高齢化による人口減少社会の中で、市場規模の基本となるゴルフ人口を増やす、または持続可能なゴルフマーケットを考え、実効性のある活動につなげる取り組みになるのだと思います。ここで取り上げているゴルフ人口などの数字は、発表した時点で過去のモノになるわけですが、将来は過去から続く時間軸の上にあるわけですから、知りうるデータから未来を想像し、予測を立てて、計画を実行し、検証して、次の活動へとつなげる(一般的にはPDCAという方法です)のが求められているゴルフ振興活動の考え方だと思います。白書では2021年はゴルフ人口が増えました。しかし、増えた原因の「なぜ」が分からずに、今後も増えると考えるのは賢い対応とはいえません。まずなぜを知りましょう。

 表のゴルフ人口をグラフにしたのが図1のグラフです。数字の可視化、見えるかですね、グラフにすれば、トレンドは一目瞭然です。多くの人がゴルフ人口は減少すると想像されていると思いますが、プレー需要というパイが大きくならない限り、小さくなった需要を奪い合うことで生き残りを図ることになります。潜在的な需要を顕在化しない限り、新しい需要を発生しません。身を切るような白兵戦をやるような状況は、今よりもさらに厳しい環境が来るということです。

過去のブーム期に業界は何をしたの?

 少し考えていただきたいと思い、図2を作成しました。ゴルフコースと練習場の人口をグラフ化したものです。以前、月刊ゴルフマネジメント誌でも掲載したグラフですが、過去を振り返ると、石川君が登場してゴルフコースはたくさんのギャラリーを数えました。私が現場にいたある年の日本オープンでは、たくさんの女性が石川君のパーティを取り囲んでいました。今から思えばですが、あの女性たちを全員ゴルファーにしていれば(服装を見ても、全員がゴルファーではないように見えましたので)、今ごろは件の女性がゴルファーとして、お子様を連れて、もちろん旦那さんとゴルフを楽しんでいたのではと思えてなりません。

 図2には石川遼プロと松山英樹プロがアマチュアとして登場してプロになった時期を書き込んであります。石川プロが登場した2007年は830万人だったゴルフ人口が、プロになった2008年には950万人、翌2009年は960万人と増えています。石川君効果でゴルフ人口が増えたかどうかも確認する方法がありませんが、仮に石川効果として、3年間はゴルフ人口が増えましたが、2010年年には810万人と大きく減少し、以後減少を続けます。

 松山君がさっそうと登場したのが2011年です。プロになった2013年のゴルフ人口が860万人へと増えたのですが、翌14年には減少しています。

 こうした動きを見るにつけて、あのブームの時にゴルファーを増やそうという業界の活動があったのだろうか、と思うのです。小説のタイトルにありますが、僕たちの失敗と思えてなりません。内容は違いますよ。でも、バブルにつながるまでのゴルフブームとバブル崩壊後の失われた20年を経験し、何を考えたのと問われている気がします。愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶとはいわれますが、歴史を含めて、経験を生かす活動が必要だと思います。

 と、個人的な思いでもありますが、近い将来起こるであろう状況を想像できるなら、今、何かをしなくてはいけないのではないでしょうか。一方で、人口減少を避けられない状況と考え、縮小均衡のマーケットを想定されているのでしょうか。いづれにしても日本経済の基盤である人口の減少は避けられない状況にあり、業界のリーダーは、ゴルフ業界全体を視野に入れた発想が不可欠です。そして、未来を託せる将来ビジョンを共有することで日本のゴルフの未来が見えてくるのではないでしょうか。

 表2と図3は、ゴルフマーケット規模の推移をまとめたものです。主なゴルフ市場規模を見ても四半世紀で半減しています。マーケティングというと企業活動のように捉えられるかもしれませんが、いまやソーシャルマーケティングが叫ばれる時代です。経産省はもちろんスポーツ庁などの資料をみてもマーケティング用語がいっぱい見受けられます。日本ゴルフ協会のJGA中期事業計画の中にKPIというマーケティングの専門用語が登場しています。何かをしなければいけないという危機感は共有できると思います。

 さて、人口という数字への疑問を挟む以前に、レジャー白書から見えるゴルフのトレンドは厳しいものです。ゴルフ人口をどう判断するかはゴルフ業界が判断することだと思います。米国や英国ではゴルフ人口を測る公的な機関の調査がありません。少なくともR&Aが独自に調査を行い、USGAがNGFの発表する人口を活用していることからも、たぶん日本のような数字がないのだと思います。廃止すべきゴルフ場利用税も、利用者数の正確な把握という結果を提供してくれています。こうした情報を有効活動して、日本のゴルフの将来を全体で考えませんか。

By 喜田 任紀

月刊ゴルフマネジメント前編集長、一般社団法人関東ゴルフ連盟グリーン委員会参与

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください