“手頃な費用で”完璧さの追求
2019年12月6日
USGA東北地区担当農学者、ポール・ジェイコブス
ゴルフ界の多くの人々は、「完璧な」プレー条件として芝生は、密生していて、均一で、雑草のないといった条件を考えています。しかし、ゴルファーが気付いていないのは、そのような「完璧さ」を追求するのには莫大な費用がかかるということです。プレーへの影響度にかかわらず、すべての害虫を完全に防除しようとすることは、大多数のゴルフ場施設にとって手頃な費用ではありません。その対策として、コース管理者(日本ではグリーンキーパーと呼ばれています)は、最も重要な場所での問題解決に害虫駆除の努力を集中させます。
ゴルフ場の害虫は、様々な形態と広がりを見せます。線虫などの一部の害虫は顕微鏡サイズです。昆虫や雑草などのその他のものは、肉眼で簡単に識別できます。サイズに関係なく、一部の害虫はプレーアビリティに深刻な影響を与える可能性があり、防除する必要がありますが、他の害虫はプレーアビリティにほとんど影響を与えないため、コストや時間管理は非効率です。
コース管理者が害虫防除計画を策定するとき、害虫がいかに問題を起こしやすいかと、防除にかかる費用とのバランスを考慮する必要があります。いくつかの害虫は、防除するのに多額の費用がかかる可能性があり、その結果、管理努力は、パッティンググリーンなどの重要なエリアに限定されなければなりません。この一例が線虫防除です。線虫を防除する製品の中には、1エーカーあたり3,000ドル以上の費用がかかるものがあり、その適用はグリーンなどの比較的小さなエリアに制限されています。広葉雑草や防除が比較的簡単な害虫は、手ごろな価格で管理できます。ほとんどの広葉雑草を防除する一部の製品は、1エーカーあたり1ドル未満の費用で済みます。驚くことではありませんが、防除が難しい害虫は通常の防除に比べ費用がかかります。
ほとんどのコース管理者が害虫を防除する最大の分野の一つがフェアウェイです。ほとんどのゴルフコースには、おそらく20〜35エーカーのフェアウェイに芝が張られています。このような広いエリアの処理は高額になる可能性があるため、多くのコース管理者はすべてのフェアウェイエリアに低コストの製品のみを適用し、薬剤をスポット処理してより高価な製品を控えめに少量使用します。ご想像のとおり、スポット処理(スプレー)は時間がかかり、30エーカーのフェアウェイで害虫を探していると、小さな被害エリアを見逃す可能性があります。
害虫がプレーアビリティに与える影響が小さい場合、害虫は防除されない場合があります。ラフは、雑草や昆虫が集中的に処理できない地域の好例です。ラフでの害虫駆除に費やすヒト・モノ・カネを少なくすることにより、より多くのリソース(資材)を、ゴルフプレーが集中する芝生エリアに集中させることができます。
次回、プレーされる際に、バンカーの周囲やラフにクローバーやタンポポを見つけたときは、優先順位の高いエリアにリソースが割り当てられていることを思い出してください。