退職者はコースメンテナンススタッフの労働を補完する

by Judd Spicer

2019年9月

新世紀がスタートした2000年、ハリウッドは、アンチエイジ映画、「スペースカウボーイズ」を制作した。クリント・イーストウッド、ジェームズ・ガーナー、トミー・リー・ジョーンズ、ドナルド・サザーランドが乗組員として登場して、旧ソ連時代の通信衛星といろいろあって地球を救った。
このスペースフィクションで登場した“高齢者”と同じ人口統計上のテーマが、ゴルフコースの維持管理に役立っている。
全国のゴルフ場の労働力は、さまざまな要因から人で不足という課題に直面している。強い国内経済は、より良い賃金の選択肢(すなわち、建設または住宅建設)を提示している。不安定要因の多い屋外条件での厳しい仕事に対する就業欲求は衰退している。学生の就労制限、不安定要素の多い外国人季節労働者のH 2-B労働プログラム、そして、多くの若い世代とミレニアル世代での、肉体労働へのためらいがある。

「ターフカウボーイズ」、退職者の再就労

米国の多数のコースで60歳を超える男たちが伝統的にスターターまたはマーシャルの役割を果たしていたが、中西部のトップコースでは、メンテナンス部門で、高齢者がパートタイムの季節労働の重要な需要を満たしてきている。
「労働力確保の闘いは厳しく、地域固有の問題とは思わない」と、イリノイ州シルビスのTPCディアランのゴルフコースメンテナンスディレクターであるアレックス・スチューデマンは語る。「それは、働き場所にはさまざまな環境が存在するからであり、より良い賃金を得るための競争が激しいためでもある」

アレックス・スチューデマンは、イリノイ州シルビスにあるTPC Deere Runゴルフコースメンテナンスディレクター (Photo credit: Ash Youd, courtesy of TPC Deere Run)

マクロ労働環境の観点から見ると、TPCディアランの監督官は、適切なコース労働力供給を維持することは、環境保護および水問題とともに業界の懸念リストの最重要課題になっていると言う。
「近年、私たちは、労働市場で地元のデパートやファーストフード店、ガソリンスタンドに負けていることに気付き始めた」とスチューデマンは付け加える。「外で働くことはもはや魅力的ではありません」
ミネソタ州ブレインのTPC ツイン・シティズのゴルフコーススーパーインテンデントであるマーク・ミケルソン氏は、次のように述べている。 「主因は、仕事を探している多くの人々の問題ではなく、強い経済に起因していると思う」
ゴルフコースは朝が早く、強い労働倫理が求められ、一方で就労者は経済的安定を好む傾向があるため、特に、高校生や大学生に長い間依存してきた夏休み期間のパートタイム業務を必要とするコースでは、退職者は重要な応急対策となっている。
「特にミネソタ州では、常に最大の問題」とミネソタ州メープルグローブのラッシュクリークゴルフクラブのゴルフアシスタント補佐であるマット・カバノーは話す。「これはいつものことで、4月、5月、9月、10月は常にそうだ」

グラウンドクルーのメンバーは、TPCディアランでフェアウェイモアを働いている (Photo credit: Ash Youd, courtesy of TPC Deere Run)

最低賃金をわずかに上回る賃金で働くターフカウボーイは、通常、コース管理作業で家賃や住宅ローンを支払う心配をしていない。
「彼らはお金のためにここにいない」とキャバノーは付け加える。
ミネソタ州チャスカにあるヘイゼルティンナショナルゴルフクラブでは、全米で最高のPGAおよびUSGAチャンピオンシップを開催したクラブの一つであり、退職者のコースメンテナンスへの参加は社会的要素を念頭に始められた。
「彼らは、ほとんどの場合、午前中に、何か目的を探している人たちです」と、ヘイゼルタインのゴルフコーススープリであるクリス・トリタボーは言う。「彼らは引退者か半引退の人たちで、何らかの形で参加できるグループを探している。退職者はよく朝に友人とコーヒーを飲みに出かける。私たちが高齢者の雇用を始めたとき、私たちが望んでいたのは、私たちがこれらの人たちにとってそのような場所になり得るということだった」
2014年に設立された退職者のコンセプトであるヘイゼルタインには、8時間のパートタイム貢献者がいる。主に4時間シフトのディボット修復作業に取り組んでいるが、他のコースでも仕事をしている。わずかな賃金に加えて、退職者は無料のゴルフと無料のコーヒーと新聞をもらって1日を始める。
「朝、ゲートのロックを解除する時、彼らの多くがすでに待っている」とトリタボーは話す。「彼らはゲートを入って来て、コーヒーを飲んで、新聞を読んで、少しおしゃべりしてから、コースに出て、ディボットを埋めている」

ミカルスキーの格言

「私たちが朝の5時に到着したとき、駐車場には何人かが待っている」とTPC ツイン・シティズのスープリは言う。
PGAツアーの3M Openを開催しているTGA ツイン・シティズは、3年前はオンライン求人でコーススタッフを確保するのに苦労していたコースだったが、初めて4人の退職者を迎えた。
「スタッフの中核は、以前、週25時間から30時間の仕事をしていた紳士たちです。その15名の定年退職者がチームを支えています」と、ミカルスキーは言う。
「彼らのほとんどは、デスク仕事をしていた人たちで、外を移動するのが好きです。そして、彼らにとって厄介な仕事かもしれないので、時々、私は気遣って仕事をお願いするが、彼らは拒否しません。彼らは忙しいことを楽しんでいる」
ラッシュクリークで働く退職者も15人(女性2人を含む)で、10年前と比較すると2倍になった。彼らのほとんどは週に15時間以上働き、1日当たり9人の退職者が現場にいます。また、60歳を超える人は、芝刈り機で刈込をし、花の手入れをし、グリーンのローリングやディボットの充填、カップの交換、春と秋のシーズンにはグリーンカバーの取り付けと取り外しなど、すべてを行いる。
「正直なところ、退職者を拒否できません」とカバノーは言いう。「彼らは冬の間もやって来て、私たちに助けが必要かどうかを尋ねる。そして、私たちは彼らを決して追い返したりしない。正直なところ、彼らなしでは仕事は回らない」
スチューデマンは、2人のフルタイム(「セカンドキャリア」)と2人のパートタイムの退職者をメンテナンスクルーに配置し、これらの高齢者の信頼性の高さが従業員の離職率を低下させ、業務に安定性を加えたと述べている。
「最高のことは絶対にノーと言わないことだと学んだ」とスチューデマンは言う。「たとえそれが誰かをジョン・ディア・クラシックのために2週間働かせることを意味するとしても、そう思う」

TPCディアランで活動中のグラウンドクルー(Photo credit: Ash Youd, courtesy of TPC Deere Run)

ミハルスキーと彼の同僚は、それぞれのスタッフへの退職者の追加は、労働問題時代の中でシフトスケジューリングのパラダイムを必然的に変えたと言う。
「さまざまなことを試し、さまざまな勤務スケジュールを試し、『これを行う唯一の方法だという既存の概念』に縛られないことが重要だ」とミハルスキーは断言する。「芝を育てる方法が一つだけではないように、スタッフを充足する方法も一つだけではない」

By 喜田 任紀

月刊ゴルフマネジメント前編集長、一般社団法人関東ゴルフ連盟グリーン委員会参与

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