― 社会生活基本調査2001-2021より ―
前回はゴルフ人口全体の変化を紹介しました。今回は男性ゴルファーの人口がどう変化しているかを紹介します。
2021年の男性ゴルフ人口は745万5,000人で、表にあるように前回調査から106万2,000人減少しています。率では14.2%と5年間で2桁の減少でした。平均で毎年3%の減少が続いてきたことになります。ゴルフ人口全体に対する男性の比率は82.6%ですが、2001年と比較すると0.7ポイント男性構成比が高くなっています。女性ゴルファーの増加を期待しますが、男性マーケットの動向がゴルフマーケット全体の趨勢を決めるという実態に今のところは変化はないようです。
10代の男性ゴルフ人口の変化
若い世代でゴルファーが増えているという現場からの声が聞こえていますが、確かに15~19歳のゴルフ人口の変化にその兆候が見られます。10から14歳の人口は7万3,000人、15~19歳は6万6,000人です。合わせて10代の男性ゴルフ人口は13万9,000人です。
この増えている流れをどう20代以降の若年層につなげるかが鍵であり、背景には少子高齢化と人口減少という社会構造の大変化があることから、10代だけでなく若年層でのゴルフ振興に具体的な対策を講じる必要に迫られています。少なくなる対象人口が減少する状況に対して、他のスポーツとの競合という関係と、スポーツマーケットを人口だけでなく消費時間を含めて市場を拡大し、他のスポーツと共存するという政策面からのアプローチが必要になるはずです。
20代の男性ゴルフ人口の変化
10代の後半年齢でゴルフ人口が増えていますが、20代前半の年齢層でも増加が続いています。20~24歳は28万6,000人、25~29歳は45万6,000人、合計20代は74万2,000人です。ところが20代後半の年齢ではこの10年間は人口が伸び悩み、2021年は人口、参加率とも減少しています。すべての世代に当てはまりますが、なぜ増加したのか、また減少しているのか、その理由を知らなくては対策も打てないと思います。ゴルフは「良いもの」といくら主張しても、現実には受け入れられなくなっており、また、増えた理由が「良いスポーツだから」では対策は出てこないと思います。
現状把握と問題(課題)の抽出、対策立案、もちろん対策の実行と評価といった、普通のマーケティング機能をゴルフ団体に期待します。ちなみに、SWOTとかSTPといったツールを使って思考研究をされてみてはどうでしょうか。それなりに経験を積まないと、こうしたマーケティングツールも使いこなせないと思います。ゴルフ業界の「いざ鎌倉」は、今だと思います。
30代の男性ゴルフ人口の変化
増えている若い世代に30代は含まれないようです。30~34歳の男性ゴルファーは40万9,000人、35~39歳は41万8,000人、合わせて82万7,000人です。この年齢層は、生産労働人口の一翼を担っているわけですから、もはや若者ではない。渋沢栄一の「四十、五十は洟垂れ(はなたれ)小僧 六十、七十は働き盛り 九十になって迎えが来たら 百まで待てと追い返せ」からすると、30代は赤ん坊か。少し前まで、ゴルファーは長老からこう言われていたそうな。
しかし、ゴルフと所得との関係性は強く、ゴルフ振興を考えるなら、30代の年齢層への配慮も必要ではないでしょうか。これは、この年齢に限らないと思われます。
40代の男性ゴルフ人口の変化
40代は30代よりさらに減少傾向が強く現れています。なぜ?に答えられる関係者の方はいらっしゃいますか?人数としては40~44歳が47万3,000人、45~49歳は62万2,000人で、100万人の大台を超え合計は109万5,000人です。
50代の男性ゴルフ人口の変化
50代も傾向は同じです。50~54歳の人口は62万9,000人、55~59歳が59万4,000人で、合計で122万3,000人です。実は年齢層別では最も男性ゴルファーが多い年代です。この年齢層には団塊の世代ジュニア世代が含まれることが、人口が多かった一因に挙げられます。
しかし、人口減少の傾向が30~50代と続くと、家庭の事情が浮かんできます。これは女性ゴルファーが増えない理由の第一に挙げられる「子育て世代」というキーワードが浮かんできます。働く世代で一番の社会問題は、正規・非正規の雇用関係です。所得の分断も指摘される中で、結局は高所得層にゴルファーが偏る状態が固定化されるようでは、ゴルフ人口の増加、ゴルフ振興は「絵にかいた餅」化してしまいます。
60代の男性ゴルフ人口の変化
70代の男性ゴルフ人口
70代の男性ゴルフ人口は、70~74歳が62万3,000人、75~79歳は35万人で、合計した人口は97万3,000人です。この年齢層では参加率は2016年までは増加傾向でしたが、2021年は共に参加率を下げています。率は70代前半で1.3ポイント減、後半が0.2ポイント減で、これまでマーケットをリードしてきた世代が含まれていますが、息切れをしているのか、年齢的に体力問題が背景にあるのか、ここは調べないわけにはいかないと思いますが、調査結果が見つかりません。この世代はゴルフに対する関心は高いはずで、持続してゴルフを楽しんでいただける環境整備によって、マーケットの成長が持続できるはずです。ティの位置の問題も指摘されていますが、USGAも言っているように、ゴルファー自身が自分に合ったティの選択を柔軟にできるように、ゴルフ場など施設を整備するだけでなく、ここは日本ゴルフ協会(JGA)が、先頭に立って働きかけと関与を深め、サポート支援をするべきだと思います。
一般社団法人日本ゴルフ場経営者協会(NGK)がまとめるゴルフ場利用税から見たゴルフ場利用者数で、非課税利用者数が全利用者数の23%弱を占めていますが、人口比で利用者の構成比を割ると、3割ほど利用が多いことになります。この数字は決して少なくなく、高齢者に優しくすれば、利用を継続してくれると期待できますよ。
80代の男性ゴルフ人口の変化
高齢化社会の中でゴルフが果たせる社会的意義として健康寿命の延伸があります。運動することの重要性は政府だけでなく、WHOも強く推奨しています。R&Aもゴルフの健康と精神衛生面での効用を世界中に広めています。健康寿命は75歳くらいで、これを少しでも長くすることが医療・社会保障面でも求められているわけですが、適度な運動強度で、継続することがポイントだと言われています。ゴルフはこの要求に応えられるスポーツです。
人口としては80~84歳で16万3,000人、85歳以上は4万2,000人です。80歳以上の男性ゴルファーは20万5,000人もいらっしゃいます。もっと増える施策を実施しませんか。R&Aはアルツハイマーの改善に効果が認められると研究に参加しています。世界で最も高齢化が進行している日本ですから、世界に向けてゴルフの効用を発信する良い機会にしたいですね。