ゴルフをする、した理由

 ゴルフ人口や起算の元になる参加率に注目が集まりますが、ゴルフ振興が求められる中でゴルフ人口を増やしたい、ゴルファーの満足度を上げて利用回数を増やす対策を構築するためには、ゴルフをする理由を知ることが対策の第一歩だと考えます。既存のゴルファーのゴルフを続けてもらうための対策としてはスコアアップを含めたプレーのマネジメントのためのプログラムに関心が集まりますが、ゴルフ人口を増やすため、初心者やこれからゴルフを始めたいと思っている人たちにゴルフへの参加を促すためには、なぜゴルファーはゴルフを選び、ゴルフをしているのかを理解する必要があります。「始めよう、続けよう、もっとゴルフを」をゴルフ振興のキャッチフレーズとして発信してきていますが、この三つのステージでゴルフコースやゴルフ練習場が取り組む課題は同じではないはずです。マーケティング的には、消費者(ゴルファーやゴルファー予備軍)が抱えている課題や問題を解決する提案を行い、彼ら/彼女たちの課題や問題解決の手助けをすることが、マーケティングの目的です。

 日本社会が人口減少社会へと構造的な変化を起こしている時に。過去の成功事例を背景にしたマーケティングでは、新たなゴルファーの獲得には繋がらないのではないでしょうか。ゴルフをなぜするのかという消費行動の裏にあるニーズやウォンツといった意識について業界関係者はもっと関心を持たなくては、新規顧客(ゴルファー)の獲得は難しくなっています。

 なぜゴルファーはゴルフをするのか、どんな理由でゴルフを始めたいと思っているのか、ゴルフを始めるきっかけはどこにあるのかについて、スポーツ庁のデータから分析します。

スコア重視派は約1割、理由の上位は健康

 ゴルファーのニーズはスコアアップをしたい。これは間違いではないのですが、スコア重視のゴルファーがどの程度いるのかといえば、最大のニーズ層を形成しているわけではありません。どうしても発言力のあるゴルファーの声が取り上げられたり、積極的な発言に関心が集まるものですが、9割以上あるといわれるサイレントマジョリティと呼ばれる「声なき多数」の存在がないがしろにされるケースがままあります。ゴルファーの大半を構成するのも声なきゴルファーであり、消極的な本音がどこにあるのか、声なき本音に応えられるゴルフマーケティングは、実現可能なのか、いろいろ考えさせられます。

 こうした本音を拾えるのもアンケート調査です。ゴルファーを対象に本音を聞くアンケートは難しいものです。どうしても積極的な発言が集まりやすい。これはゴルフに限る話ではないのですが、会員制ゴルフ場が9割を占める日本では、業界的には、そもそも会員という「ゴルフが好き」というフィルターがかかった声が多く集まりやすいものです。欧米のプライベートクラブのようにメンバーがクラブの経営収支に強く関わる場合は、メンバーのニーズを重視することが、プライベートクラブのマーケティングの在り方だと思います。日本の場合はゴルフ場収入の6割以上をメンバー以外の収入で賄うわけですから、日本的ゴルフ倶楽部が抱える課題もココにあるわけです。米国のようにプライベートであれパブリックであれ、積極的なマーケティングが展開できない側面を抱えている実情があります。日本に会員制倶楽部はどれだけあるのかと問われる所でもあるわけです。

 ただし、ゴルフ業界全体のゴルフ振興という点では、ゴルファーという括りでのニーズの把握は必要不可欠です。スポーツ庁のデータからはゴルファー(ゴルフコース)の目的は表のようになります。個別ゴルフ場は、全体でのゴルフ振興の取り組みの中で、各ゴルフ場の実勢に合わせたマーケティングを展開すればいのです。

 回答の多い順に整理すると次のグラフになります。パレート図というグラフです。健康のため、体力増進・維持のため、楽しみ、気晴らしと理由が続きます。自己の記録(スコア)や能力向上は8番目に登場します。全体の11.9%のゴルファーがこう答えています。

 ゴルフコースでの人口は約600万人と推計されますから、70万人ほどがスコア重視派ということになります。日本ゴルフ協会(JGA)のハンディキャップ(WHS)の取得者が2003年2月時点で約53万人です。スコア重視派が全員HDCPを取得しているかどうかというとそうではないでしょうし、申請をしている方もいらっしゃるわけで、スコアにこだわりを持っているゴルファーは、ほぼこの程度の比率といってよいのだと思います。となると、スコア以外に関心のほとんどがあるということです。問題は、この状態は分かっていてもスコア以外の要素を商品化できないゴルフ場のマーケッティング機能ということにもつながります。

 しかし、これからのゴルフ場マーケティングでは、スコア以外の要素の商品化が欠かせません。ゴルフというスポーツとゴルフをする理由をつなげて、具体的な提案にするという作業が求められるはずです。特に、業界団体にマーケティング機能が欠けていては、ゴルファーを増やす政策の提案はできないと思います。ゴルファーを増やすのではなくて、年々減少するゴルファーの満足度を上げる対策を実施し、できるだけ人口減少を少なくする、消極的マーケティングに徹することで、後はシェア争いという姿が見えてきます。

 別のグラフでゴルフをする目的を整理しました。目先を変えただけですが、視覚的にどこがポイント化かが見えてくると思います。

 男性と女性では若干ですが差が現れます。女性は体力面より気晴らしや友人・友達との交流といった精神面での要素がやや強くなっています。

ゴルフ練習場におけるゴルフをする理由

 ゴルフ練習場についてもゴルフをした、する理由をまとめました。ゴルフコースと練習場を別々に捉えるのではなくて、連携してゴルフ振興を考える必要があります。ゴルフ練習場からゴルフコースへという流れはもちろんですが、ゴルフを継続する理由としてスコアやスキルアップは重要な要素であることに違いはありません。ゴルフコースと練習場利用がループする環境をどう構築するかも、今後のゴルフ振興では重要になります。人口が減ることでのマーケット規模の縮小を防ぐためには、ゴルファーの“ゴルフ機会を増やすことしか対策はありません。

By 喜田 任紀

月刊ゴルフマネジメント前編集長、一般社団法人関東ゴルフ連盟グリーン委員会参与

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