ゴルフ人口について

 ゴルフ人口は、ゴルフ参加率を人口にかけて推計しています。参加率の稿で書きましたが、日本の総人口が減少を続け、これからは目に見えて人口が減っていきます。2年後の令和7(2025)年には1億2000万人を割り込み、中位予測ですが毎年70~80万人規模で人口が減少することになっています。少子高齢化ですから、65歳以上は当分の間、20年くらいは増加し、一方で出生率がさらに低くなっているそうですから、子供の人口だけでなく生産労働人口も減少を続けます。人口減少をひしひしと感じることになりそうです。常人にとっては頭では分かっていても、皮膚感覚というか、肌身で感じないと実感がわかないもので、でも、実感をした時点では有効な対策が打てないものです。

 ゴルフ人口は、このように総人口が減少の一途をたどるわけですから、参加率が下がれば率以上に人口は減少します。ゴルフ人口を減らさないためにも参加率を上げる必要があります。マーケットという点では、1人当たりのプレー回数が増加すればゴルフ場の市場規模は維持、更に拡大する可能性はありますが、ゴルファーの高齢化率が今以上に高くなることは必至ですから、高齢者対策の重要性は間違いなく増すでしょう。といってもジュニアや若年層だけでなく、中高年齢層対策も手は抜けませんから、現場は今まで以上に大変?かもしれません。その点では、経営・営業戦略の立案、経営意思決定での顧客情報の収集や分析といった点でAIの活用などは積極的に取り組むべき課題といえます。

ゴルフコース人口は増えたけど

 ゴルフコース参加率が0.2ポイント高くなって6.4%になったことで2022年のゴルフ人口は前年の585万人から604万人に増えました。18万人増えて増加率は3.1%です。参加率が0.2%高くなればゴルフ人口は3%増えます。参加率の増加はわずかですが人口は3%も増加します。人口減少社会にあっては、これからは参加率が重要になってきますということです。

 男女別では女性の減少が気になります。女性ゴルファーを増やすことが業界の重要課題なのに現実問題として減少しています。過去5年間の参加率の推移でも紹介しましたが女性の参加率は、どちらかといえば低下気味です。ここは数値目標を設けて、対策の実行と成果評価といった具体的な取り組みを考えるべきだと思います。参考までにコッターの「変革の8段階」という考え方を紹介します。

1 危機意識を高める

2 危機意識を高め変革推進のための連帯チームを築く

3 ビジョンと戦略を生み出す

4 変革のビジョンを周知徹底する

5 従業員の自発を促す

6 短期的成果を実現する

7 成果を生かして、さらなる変革を推進する

8 新しい方法を企業文化に根づかせる

 ゴルフ業界としての取り組みは従業員とか、企業という単語を置き換えていただければいいのですが、一項目だけを取り上げて実行されると失敗のもとになります。1から順に実行することで成果が挙げられることになります。コッターさん(ジョン・P・コッター)はハーバード大学ビジネススクールの松下幸之助記念講座名誉教授で、リーダーシップ論の第一人者です。

 表のデータをそれぞれグラフにしました。対前年比では男性が25万8000人増えたのに対して女性は7万1000人減少しています。女性対策はゴルフに限らずライフステージとの関係性が強く、難しい問題を多く含みます。一筋縄ではいかないことになっていますから、総合的な取り組みが必要です。

 性別で年齢別の変化をまとめましたが、男性で気になるのは70代の人口減です。新型コロナの影響は落ち着いてきた時期ですから、日常が戻る中での現象であれば、60代が大きく増やしているだけになおのこと気になります。30代の減少についても注視する必要があると思われます。今年(2023年)は給与(所得)改善が進みそうですが、結婚・子育てなどによる生活環境の変化がレジャー(ゴルフ)消費に影響を与えているのであれば何らかの対策が必要ということになります。

 女性については、特に男性以上に70代での減少が大きく、プレー需要を考えると人口が多いだけにこれほどの減少は気になります。30代は男性の動きとも連動しているのかもしれませんが、この年齢層での落ち込みが気になります。

 

気になるのはゴルフ練習場人口の減少

 ゴルフ練習場人口の減少は気になります。本来ゴルフ練習場で新しいゴルファーが育てられているはずですから、ここでゴルファーが増えていない現状に将来のゴルフ人口(需要)に不安を感じる方は多いと思います。ゴルファーの創造という面では練習場関係者だけでなく業界関係者が一丸となって対策を練る必要があるはずです。ここでゴルファーを増やせないと将来のゴルフマーケットは厳しいと言わざるを得ません。ゴルフコースが練習場の活用に力を入れ、プロゴルファーなどを雇用して、ゴルフコースでゴルファーを育成するという取り組みに力を入れられるのか? 住環境とゴルフコースの立地する環境を考えると、ゴルフコースでの取り組みには制約も多く、限界が見えている気がします。やはり総合的なゴルファーの創造・育成プログラムが必要ではないでしょうか。

ゴルファー人口としてまとめると

 ゴルフコースとゴルフ練習場のどちらかを利用している人をゴルファーとして集計すると人口は711万人になります。表にまとめましたが、かろうじて0.8%増えています。最後に男女比をグラフにしていますが、85.7%が男性ですから、男性ゴルファーの状況が色濃く出ます。ただやはり女性ゴルファーの減少は、これからのゴルフマーケットを考えると対策は不可欠です。ただし、背景を考えると、ゴルフコースやゴルフ練習場で完結する問題よりは社会環境を起因とする問題が大きいと思われます。しかし、社会のせいと片付けられないゴルフ業界の事情もありますから、海外の取り組み事例の研究も含め、具体的効果が上げられる対策の検討が求められます。

By 喜田 任紀

月刊ゴルフマネジメント前編集長、一般社団法人関東ゴルフ連盟グリーン委員会参与

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