7月14日にレジャー白書2023(速報版)の説明会がありました。推計ゴルフ人口などの詳報は秋頃になりますが、発表された資料からゴルフに関連するデータをまとめました。

 次の表は発表された2022年の参加率、年間活動回数、年間費用の3データについて手元にある2014年からの推移をまとめたものです。10年以上前の数字は人口減少社会へと移行してしまった現在では参考にならないと思います。

 表の数字を見ても、2022年の参加率は前年よりゴルフコースで0.4%低くなり5.3%に、ゴルフ練習場は0.6%下がり5.2%になりました。年間活動回数はコースが2.6回減少し14.6回に、練習場は0.5回増え20.2回になりました。年間費用はコースが大きく増えて4万7400円増の18万3200円になり、練習場は200円増えて2万7800円になりました。

 ゴルフコースについては、参加率は低下し、活動回数も減少しましたが、年間費用は増えており、巷間いわれているように料金の値上げによる増収効果が確認できます。練習場は、コース同様に参加率は下がりましたが、利用者数が増え、費用(売上げ)の若干の増加となりました、という説明はできます。

 ただ、最近の利用者動向は、コースは地域差がありますが頭打ちの傾向が現れ、練習場は昨年末頃から減少傾向が出ており、新型コロナによる需要の伸びにブレーキがかかってきているともとれる動きが出ています。米国のNGFも予測の難しさを暗に示していますが、日本も先が読みにくい状況にあるようです。だからこそデータの重要性が増しているわけですが、分析力を含めて解決しなくてはいけない課題が見えてきています。

 といって明確な指摘ができるわけでもないのですが、レジャー白書のデータからは、図に示したように参加率は確実に低下してきていることが分かります。この参加率の低下は他での記事でも指摘していますが、人口減少社会にあっては参加率の低下はゴルフマーケットにとって致命的な動きです。母数となる人口が減少するわけですから、参加率の低下は人口の減少ペース以上にゴルフ人口が減少している(しようとしている)ことを説明しています。このことからも、言葉ではなくて数字で検証できる、現実性のあるゴルフ普及・振興策を立案しないと日本の人口が半減する以上の勢いでゴルフ人口は減少し、マーケットは想像されている以上に縮小することになります。

 ゴルフが良いスポーツであるということに関係なく、ゴルフ経済は需要との関係で拡大もし、縮小します。ここはマーケットという視点をしっかりと持つべきです。米国のUSGAを含めたゴルフ業界やR&Aがなぜゴルフ経済を数字で把握し、ゴルフの社会貢献度の認知向上に動いているかを理解すべきです。

 いえいえ、ゴルフ場はゴルファーで賑わっていますよ。心配はありませんと思っている関係者の人、確かに立地の良いゴルフ場、知名度の高いゴルフ場では好調を維持されているようです。しかしながら一部のゴルフ場が潤っていても、ゴルフマーケットを説明する数字はゴルフマーケットの将来への不安を示しています。これはレジャー白書のデータだけでなく、スポーツ庁の調査結果からも指摘されることです。昔のように景気は循環するから一時的な不振もそのうち回復するという発想は、日本の人口が増え続け、それに合わせて経済も拡大していた過去の成功体験でしかありません。

 年間活動回数のグラフだけを見ると増えているじゃないか、と言われるかもしれませんが、この活動回数の動きを説明する要因を考えてみてください。何がありますか? 個人所得が今後大きく伸びる、池田内閣時代の所得倍増なんていう政治家も経済人もいません。個人が使える時間もお金も制限があります。時間の有効活用といってもゴルフは普通、半日を要するレジャー(競技でもいいです)です。何かの時間とトレードしない限り簡単にはゴルフの時間は作れません。次の年間費用の図にも青色の折れ線グラフを入れてあります。今回の白書の説明会で「国内旅行が1位に返り咲きました」と報告されました。新型コロナの影響がマイナスに色濃く出た業種です。ゴルフは逆にプラスに働きましたが、では国内旅行の反転とゴルフの関係はどうなっているのかを見るために、冒頭の表にも数字を表記してありますが、グラフでみると特にゴルフコースの動きと国内旅行の動きが逆の動きをしていることに気づかれると思います。一方が増えれば他が減るという関係が見えてきます。

 しかし年間費用は国内旅行とゴルフは同じ動きです。たぶんどこかの業種に影響が出ているものと想像します。想像じゃあね、といわれるでしょうが、次にゴルフと国内旅行の相関関係を見てみました。

 以下の表はゴルフと国内観光との参加率、活動回数、年間費用の相関分析の結果です。EXCELで簡単にできますから、皆さんでも検証してください。

 この結果からいえることは、レジャーにさける時間もお金も同じ制約の関係にあり、ゴルフと国内旅行は弱い相関関係が認められるということです。やはり時間とお金の制約との関係を考えざるを得ません。

 参加率はゴルフコース、練習場とも国内旅行とプラスの相関がみられます。国内旅行との関係はゴルフコースが0.62、練習場が0.56ですから、国内旅行が増えればゴルフも連動して増える説明になります。このようにやや強い相関関係が認められ。余暇支出が増えればともに増えますという関係です。週休3日とか、個人所得が増えればゴルフも国内旅行も参加率は増えるはずです。

 しかし、年間の活動回数では、ゴルフコースと国内旅行は、どちらかを増やせば一方は制約を受けるという弱い逆相関の関係が認められ、ゴルフの回数が増えれば旅行回数は減る傾向があるようです。ただし、相関係数は-0.23と小さく、非常に弱いが相関関係が認められるというわけです。

 費用面では、基本的にはゴルフの支出が増えれば練習場も国内旅行も増やす傾向が認められますが、これも非常に弱い相関です。なぜか練習場と旅行は弱い逆相関の関係のようです。

レジャー白書2023速報資料:https://www.jpc-net.jp/research/detail/006494.html

By 喜田 任紀

月刊ゴルフマネジメント前編集長、一般社団法人関東ゴルフ連盟グリーン委員会参与

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